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Microsoft Imagine Cup 2008世界大会レポート(後編)

慶応大生、24時間ぶっ通しで問題を解く

2008年07月31日 22時05分更新

文● 新 淳一/ASCII.jp

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Imagine Cupで問われるのは「人間力」

 Imagine Cupは、個人やチームの才能や技術を競う場だ。マイクロソフトでImagine Cupプロジェクトを統括する矢岡明倫さんは、「Imagine Cupに取り組んでみると、技術だけではなく、ソーシャルスキルコミュニケーションスキルも試されることがわかります。いろんなことが総合的に経験できるイベントであり、学生のうちでなければ体験できない」という。持てる力を存分に発揮するには人間力が問われるわけだ。

 また、「マイクロソフト主催の世界規模の技術コンテストと聞くとハイレベルで自分にはとても無理と思う人もいるでしょう。しかし、高橋さんのように初めての挑戦でよい成績を出す人もいます。日本の学生は一歩下がってしまうところがあると思いますが、マイクロソフトもできる限りサポートします」ともいう。

 一歩前に進んでみれば、そこには力添えしてくれる人がいて、自分のスキルアップができ、さらに人生観まで変わってしまうかもしれない。「Imagine Cupはそんなイベントです。ぜひ参加してください」と話す。

DreamSpark

DreamSparkのサイト。現在のところ、各種ツールの無償提供を受けられる対象学生は、大学院生、大学生、専門学校生、高等専門学校生の 4、5年生のみ。認証には国際学生証が必要だ

 もちろん、たとえばソフトウェアデザイン部門には「.NET Framework 2.0」や「ASP.NET」の利用、技術要素として「SQL Server」などマイクロソフト製品を組み込むなどの条件がルールとして付いており、マイクロソフトの企業活動という側面もある。とはいえ、Visual Studio 2008 Professional EditionやExpression Studio、Windows Server 2003 Standard Edition、XNA Game Studioといった有償ツールを学生向けに無償提供する「DreamSpark」というプログラムも用意されている。こうしたプログラムを利用して、就職に役立つ知識と技能を身につけつつ、世界を目指すのもよいだろう。

 いずれにしても Imagine Cupのハードルは決して低くない。マイクロソフトは明言を避けるが、日本でのエントリー数は他国に比べ少ないらしい。マイクロソフトと政府機関の関係が強い国などでは、それこそ国をあげてImagine Cupを盛り上げるケースもあるが、日本ではImagine Cupの知名度が他国に比べて低い、という事情もあるだろう。また、とりわけソフトウェアデザイン部門や組み込み開発部門の参加者数が伸び悩んでいるのは、研究などの学業とコンテスト参加の両立が難しいという、大学での教育のあり方も関係していてそうだ。周囲の理解が得られないと、数カ月の開発期間のあいだ、教官や他の研究室生の目を気にしながら作業しなければならない。

 とはいえ、周囲の理解と協力を得るための努力はまさに人間力の問題であり、「Imagine Cupの課題を具現化するソリューション、ないし作品を生み出してやる!」という気概と合わせて、本大会に出場する原動力になるはずだ。早々に来年も参加すると表明している2008年の代表チーム、NISlabや高橋直大さんという強敵がいるが、Imagine Cupは大きなチャンスだ「世界の頂点を目指す」という、シンプルながらもきわめて野心的な目標を立て、濃密な時間を過ごす機会を持てる若い人たちが、心底うらやましいと思わずにはいられない。

(次ページへ続く)

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