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週末見るコンテンツはコレ★ 第43回

スーパースター軍団の先駆者「ペレを買った男」

2008年06月06日 22時21分更新

文● 大石太郎、イラスト●加藤 豊

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試合後は専用機で移動

試合にも果敢に挑む

試合にも果敢に挑む

 ロスが壮大な野望に燃える影で、違うベクトルで燃えている男もいた。イタリアの得点王ジョルジュ・キナーリャだ。強烈なエゴをむき出しにし、チーム内では孤立するも、トップのロスには露骨にすり寄り、人事にも口を出すようになる。

 自分の言いなりとなる監督を就任させ、最終的にはニューヨーク・コスモスのオーナーにまで登りつめる。まさにアメリカンドリーム。同僚にはなりたくないが、異常なほどの上昇志向は見習うところが大きい。

 ロスの目論見は見事に当たり、ニューヨーク・コスモスは大躍進を続け、サッカーブームを牽引する。専用機で移動し、試合が終わったら伝説のディスコ「スタジオ54」でどんちゃん騒ぎ。少し前まではセミプロに毛が生えた程度のサッカー選手たちは、いつの間にかロックスターのような生活を送るようになっていた。

スタジアムは満員の客で埋め尽くされる日々

スタジアムは満員の客で埋め尽くされる日々

 だが、ニューヨーク・コスモスの成功に惹かれて参入してきたチームにはペレもいない、ベッケンバウアーもいない。昔のニューヨーク・コスモスのようなセミプロレベルの選手しかいない。リーグの水準は下がり、ファンは次第に離れていく。



追い打ちをかけたのは「アタリショック」

 当時圧倒的なシェアを誇っていたゲーム機「Atari 2600」に、多数のサードパーティが参入。ゲームの水準が下がり、一気に消費者離れがおこってしまった。稼ぎ頭だったアタリも、サッカー北米リーグと同じ理由で衰退してしまう。子会社アタリの不振によりワーナーも収益が悪化。スーパースターを養うだけの体力がなくなってしまう。

 リーグは消滅してしまったが、ニューヨーク・コスモスはアメリカにサッカーの種をまいた。ロスが子供じみた野望を持たなかったら、アメリカでW杯は開催されてなかったかもしれないし、あのペレが出演した名作「勝利への脱出」も生まれなかったかもしれない。

 レアルマドリードやACミランにも通じるスーパースター軍団を、70年代に作りあげた経営者としてのひらめきと判断は敬服に値する。サッカーファンならずとも楽しめるはずだ。



ペレを買った男
発売日:2008年6月4日
価格:4410円
発売元:キングレコード/トルネード・フィルム
販売元:キングレコード




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