販売店、コンテンツプロバイダーにもメリットが
しかしこの端末のメリットはユーザーに対してだけではなかった。
まず外装の完全な着せ替えは、基本的にauショップでの対応となる。着せ替えパネルを買ってきて、ユーザー自身が交換するのは、保証対象外となるのだ。
KDDIによれば、当初はパネル代、工賃込みで5000〜10000円とのことだが、ブランドとのコラボレーションや、高級感ある素材のパネルが出れば、その限りではないという。メニュー画面の着せ替えについても、auショップで無料で対応することになる。
つまり、新規契約や料金の支払い、変更手続き以外であまり訪れることのなくなったauショップにユーザーが足を向ける新たな目的を用意したことになる。全国規模でネットワークをしているauショップとユーザーとの頻繁なコミュニケーションの機能を持たせることで、auブランドに対する長い関係性の構築を作り出せるかもしれない。
また外装の着せ替え、メニュー画面を含めた着せ替えには、数多くのコラボレーターが参加している。スポーツのチームやアニメなどのキャラクター、トヨタ自動車まで専用のメニュー画面を用意しているのだ。
これは、ケータイのオープン化の系譜の中で、端末そのもののデザイン、そして端末の顔でもあるメインメニュー画面の解放を意味する。
コラボレーターや既存のコンテンツプロバイダーは、自社ブランドのデザインやカラー、そしてメインメニューに配置できる自社のサービスや機能を使った、新しい顧客とのコミュニケーションツールとして、auのreを活用できるようになる。ケータイがサービスやコンテンツによる収益を支えるプラットホーム性を強化したと見ることができるだろう。
この夏、「攻め続けるソフトバンクモバイル」「守りに入ったドコモ」の間で、auは、ユーザーや自社が持っている販売店ネットワーク、そしてコンテンツプロバイダーの3者を「攻めながら守る」という方針を打ち出したのだ。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
*次回は6月12日掲載予定
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