「リチウム」と聞くと何をイメージするだろうか? 多くの人はリチウム電池を想像するかもしれない。しかし意外なところでは、躁鬱病の薬にも使われている。有名なところでは、リーマスと呼ばれる気分安定薬の主成分が炭酸リチウムだ。電化製品だけでなく、医療の世界でも使われてきたリチウムだが、このたび生理学研究所で驚くべき研究データが発表された。
リチウムが、脳の神経幹細胞を増やして神経再生を活性化させることが、生理学研究所の等 誠司(ひとしせいじ)准教授のグループにより明らかになったのだ。よく俗説で「1日に脳細胞が10万個死んでいく」と言われるように、大人になると神経細胞の増殖や神経の働きが衰えていくだけに、この研究結果は驚きである。
等准教授のグループは、リチウムをマウスに3週間投与してみたところ、神経になる途中の細胞である「神経前駆細胞」が増加したという。
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