「機動戦士ガンダム」では、ニュータイプがサイコミュを使って、思念でファンネルを操作していた。頭の中で思い浮かべるだけで遠隔操作が可能になる。それは現在の科学技術の夢のひとつであり、今も頭の骨に機器を埋め込んで対象物を操作する研究などが進められている。
そしてこのたび、慶応義塾大学理工学部の牛場潤一講師が、着脱可能な装置を使用しての遠隔操作を実現したッ! 牛場講師はこの実験で、手足が不自由な男性に装置を使ってもらい「セカンドライフ」のアバターを操作することに成功したのである。
実験ではまず、装置を使用する前に、男性が脳内で手足を動かすイメージや、何もしていないときの脳波を測定。そのデータを元に「ブレーン・マシン・インターフェース」という技術で「前進」「右折」「左折」「停止」の4つの動作を、装置を使って可能にした。
また、慶應義塾大学セカンドライフキャンパス内に「ブレーン・マシン・インターフェース・リサーチセンター」を竣工。一階にあるトレーニングジムで下の写真のように被験者が訓練する空間を設けた。
このトレーニングジムでは、ジグザグした道の先にあるゴールの赤い板を目指して、アバターを動かしていくといった訓練が行なわれていた。被験者の男性は、電動車椅子の操作棒を倒すイメージでアバターを前進させたという。実際に男性は脳波でアバターを歩かせることに成功し、ボイスチャット機能で実験に参加した学生と会話したそうだ。
牛場講師によると、ほかの被験者の実験では、セカンドライフ内のセンターの外に行って雪山登山もしたとか。身体を動かせない人だと、どうしても行動範囲が限られてしまう。しかし、脳波を察知して動くデバイスが開発できれば、まだセカンドライフの中だけではあるけれど、行動範囲が広がってくる。今回の実験は将来的に、バーチャルワールドだけでなくリアルワールドにも応用されていくはずだ。やがて、身体の不自由な人がどんどん実社会に進出するようになり、すべての人の生活がより便利になっていくことだろう。