レモンや梅干しなど酸っぱいモノを食べたら唾液が出てくる。これ常識。この記事の読者でもそんな苦い……もとい酸っぱい経験を味わった人がいるかもしれない。ためしに筆者もレモンを丸かじりしてみた。
酸っぱい物を味わおうとすると、脳から口に「唾液を出せ!」と指令が出て、口の中が唾液でいっぱいになるメカニズムは解明されている。しかしなぜ、唾液が出てきたあとに、しばらく余計に酸っぱさを感じるのだろうか? この事象について、生理学研究所の富永真琴教授と稲田 仁特任助教の研究グループが興味深い研究結果を出している。
研究グループは舌の脇の奥にある酸味を感じるセンサー「PKDチャネル」に注目。この「PKDチャネル」は酸味を感じてもすぐに反応せず、唾液などで酸味の元を取り除いたときに強く反応することを発見したのだ。これを、酸味の刺激がオフで反応する「オフ・スイッチ」(オフ反応)と言う。オフ・スイッチの発見は世界初の快挙だ。しかし、酸味が消えても酸っぱい感じが舌に残るのはどうしてだろうか?
稲田特任助教によると「強い酸味は危険な食べ物であることが多く、すぐに唾液で洗い流すようにできている。そこで、唾液で洗い流されたあとでも、「酸っぱさ」をいつまでも感じられる仕組みができているのではないか」とのこと。「PKDチャネル」が身体を防御するために過剰に反応するから、口の中の酸っぱさが消えないのか! と、この記事を書いただけで口の中に唾液がたまってきた……。