お金をとれる“付加価値”とは
Ulletは企業状態を判断するのに必要な情報が集約されていて、Uチャート分析では、グラフの上にカーソルを置くと「負債」や「資産」がいくらかが表示され、ひと目で財務内容がわかるようになっている。ほかのサイトのAPIを有効利用していて、「Google Maps API」で企業の所在地を知ることができ、「kizAPI(きざっぴ)」「SAGOOL検索API」「reflexa(連想検索エンジン」「はてなウェブサービス」では、株価やニュース、ブログ、インターネットで取り上げられた情報などを読むことができる。さらに企業の沿革を知るためにイースト辞書Webサービス「辞蔵」や、Yahoo!検索APIで株価チャートが表示されている。情報量の多さはかなりのものだ。
「これだけ多くの情報を集積していれば、十分にビジネスとして完結していると評価をいただきます。ただし、これらは公開されている既存のデータや、他社が提供しているAPIを使って情報を集積しているにすぎないので、お金をいただくサービスではないと考えています。公開されている技術と技術を組み合わせただけではマッシュアップと言い切れないと思いますし、それだけではお金のとれる付加価値は生み出せていません。新たな価値がなくてはならないのです。たとえば情報を得たら、「集積」「統計」「分析」「行動」へとアクションしていくのですが、お金がとれるのは少なくとも「分析」以降ですね。その考えのもと、Ulletは無料で公開しています」
マッシュアップサイトを成功させるには、付加価値を提供できるかが重要だ。Ulletは情報の集積、統計までを行ない、さらに視覚的にわかりやすく表示することで新たな価値を付加し、サイトを訪れたユーザーが企業の経営状態を分析する手助けをしている。これだけでも十分ビジネスになるように感じられるが、西野さんいわく、そうではないようだ。
「いくつかの情報を集めたインフォメーションから、分析などのアクションによって新たな結果を出せるもの、私たちはそれを『インテリジェンス』と呼んでいます。それこそマッシュアップがビジネスにつながる手段と考えています。6月からサービスを開始した有料版の『Ullet Pro』は、情報を収集したこれまでのUlletに、『分析結果』というインテリジェンスを付加したものです」
Ullet ProにはUlletの機能に加えて、決算書のデータから企業の資産価値を分析する「会計工学分析」機能、大株主が保有している株主情報が検索できる「大株主検索」、上場企業の「役員検索」、さらには証券会社のストラテジストが提供するような投資情報がプラスされている。このサービスの開始も、個人投資家とは違う見方をする証券アナリストなどのプロや、経営者からの話を聞き、多くのユーザーが欲しいと思う情報をマッシュアップさせた結果だった。
「ビジネスとしてはまだ第1フェーズを展開した段階です。次は企業向けに『Ullet IR』を提供します。ブログ、ニュース、掲示板の件数と株価を連動させて、『株価が上がるときには実際にどういう反応がインターネット上で起こっているのか』をレポートするサービスです。今、企業の広報の方たちはインターネット上に自社の情報がどれだけ出ているかウォッチすることが業務になっていますが、その広報の方たちが行なっているリサーチや分析を私たちが代行するというものです。やはり発想の基本はお客様が欲しいと思う情報を追求し、それを実現するための方法は次というように考えます。その方法の1つとしてマッシュアップがあるでしょう」
- ■取材協力
- 株式会社メディネットグローバル
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