“20世紀最高の映像魔術師”の作品がカラーでよみがえった一夜
【レポート】眞鍋かをりさんも駆けつけたTIFF2007ハリーハウンゼン上映会
2007年10月26日 14時40分更新
20日から開催されている「第20回東京国際映画祭」(20th TOKYO INTERNATIONAL FILM FESTIVAL、略称:TIFF2007)では、連日最新作や過去の名作など、さまざまな映画作品が世界中から集められ、上映されている。そんな中で24日には、旧作なのに新しい“最もマニアックな作品”の上映会が行なわれた。SFファンタジー映画の金字塔を築いた映像の魔術師、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)監督作品の特集上映だ。上映会にはハリーハウンゼン監督の映画「シンドバッドの冒険」シリーズのキャラクターに扮した真鍋かをりさんと林家いっ平さんも駆けつけ、上映会を盛り上げた。
セクシーな衣装で登場の眞鍋さん
演じてみたいのはお姫様より……?
レイ・ハリーハウゼン監督は、1950年~1980年代にかけて、「シンドバッドの冒険」シリーズや「SF巨大生物の島」など、SFファンタジー映画を作り続けたクリエイターだ。今回の特別上映では、このハリーハウゼン監督の初期のモノクロ作品である「地球まで2千万マイル」、「水爆と深海の怪物」、「世紀の謎空飛ぶ円盤地球を襲撃す」の3作が、カラーライズ作業によってデジタルカラー作品に生まれ変わり、上映された。これらを中心とした全15作品を収録するDVDボックス「レイ・ハリーハウゼン コンプリート・コレクション」の発売を記念した企画で、一晩にこの3作品が一気に上映されるという、マニア垂涎の企画だ。
このカラーライズバージョンが劇場で上映されるのは、日本ではもちろん、世界でも初の試みとなり、往年の特撮マニアやVFXファンを多く集めて、会場はほぼ満席の大盛況となった。上映に先駆けて、タレントの真鍋かをりさんとハリーハウゼン監督作品が大好きという噺家の林家いっ平さんの2人が「シンドバッドの冒険」シリーズの扮装で登場し、上映会を盛り上げた。
真鍋さんはオレンジのチューブトップにホットパンツというヘソだしスタイルで、シッドバッドに出てくるお姫様をモチーフにしたエキゾチックでセクシーな衣裳に身を包んで現われると、「シンドバットに出てくるお姫様はもっと露出が激しいんですけど、そこまでする勇気がなくて、これが精一杯です」と、しきりに照れていた。
林家いっ平さんは「幼稚園のお遊戯会でこの格好をさせられたんです」という、王子様の(ような?)衣裳で登場すると、国際映画祭を意識してか英語で「ハリーハウゼン監督はお父さん(三代目林家三平氏)が大好きで、『ビューティフル、ビューティフル』と言っていました。どーもすいません」と昭和の爆笑王、故・林家三平氏の名ギャグを交えてノリのいい挨拶を行なった。また、作品についても、「カリーという6つの剣を持つキャラクターがいますが、それが『トゥームレイダー』で活かされていたり、今の作品の教科書になっているところが大好きです」と語り、作品への造詣が深さをうかがわせた。
どの役をやってみたいか、という質問に対して、真鍋さんは「せっかくこういう衣裳を着たのでお姫様役もやってみたいのですが、メデューサをやってみたいですね」と答え、すっかりハリーハウゼンの世界にはまっているようだった。また、林家さんは「骸骨軍団! ぜひ、林家一門でやりたいですね」と語り、笑いを誘った。
監督自ら監修して、1コマごとにカラーライズされ
21世紀の現代に生まれ変わった
ハリーハウゼン監督作品の最大の特徴は、なんといっても劇中、異境に踏み込む主人公たちの前に立ちはだかるクリーチャーの数々だろう。これらのクリーチャーは、現在のように3D CGで描き出すのではなく、パペットアニメと言われるフィギュアを使ったストップモーション・アニメの技法を用いて生き生きと描かれている。ここが、ハリーハウゼン監督が20世紀最高の映像魔術師と言われる所以だ。わが国においても、特撮の父と尊敬される円谷英二特技監督と並び称され、ジョージ・ルーカス(George Lucas)監督やティム・バートン(Timothy William Burton)監督ら、世界中の映像クリエイターの尊敬を集めるVFXの祖なのだ。
今回のカラーライズ作業には、ハリーハウゼン監督が自ら監修にあたり、製作当時のテクニカラーの色を意識して、徹底的にこだわった映像に仕上げられた。このカラーライズ作業は、デジタル技術を使って、1コマ1コマ丁寧にカラー化していくという、これまた撮影時の苦労にも通じる、気の遠くなるような作業によるもの。その成果もあって、元からカラーだったのかと錯覚するほどの自然なクオリティーに仕上がっている。さらにカラー化で明度が上がったことにより、細部のディテールまで明確に分かるようになった。
当初、カラーでの製作を予定していたという「地球まで2千万マイル」の主役である、ファンの間でも大変人気の高い“金星竜イーマ”も製作当初にハリーハウゼン監督がイメージしていた色が着けられており、これを大画面のスクリーンで見られたこの上映会は、ファンにとってこの上ない至福の一時だったと言えよう。
上映中、何度も繰り替えし観ているファンにとってはおなじみのセオリー通りのセリフ回しや、大時代的な演出が出てくると、それを待ち構えていたかのように苦笑する様子がうかがえたり、クリーチャが出てくると静かなどよめきがあったりと、記念すべき上映を存分に楽しんでいたようだった。