日本では未発売の“革張り”ThinkPadをご存じだろうか。正式名称は『ThinkPad Reserved Edition』で、天面や底面だけでなく側面までも本革でカバーする、高級感あふれるモバイルノートだ(中身はThinkPad X61をベースにしている)。
革はカバンなどの革製品で定評のある北海道のソメスサドル(株)製を使用し、端子部分や排熱用ファンは覆わないように加工されているなど、革があたかもノートパソコンの外装に一体化されたよう設計されている。ちなみに、値段は日本円にして70万円程度で完全受注生産。外観だけでなく、ユーザーからは24時間サポートを受け付けるなど、プレミアサービスを含めた値段になっているという。
レノボ・ジャパン(株)は24日、東京・六本木の同社オフィスにおいて、ノートパソコンのデザイン(意匠および機構設計)担当者を囲んでのプレスミーティングを開催した。ここでは、外装や外観としてのデザイン、および設計としてのデザインについての同社のこだわりが担当者自らの口で明かされたが、特に興味深かったのは“アドバンストデザイン”と“CFRPの進化”であった。
アドバンストデザインとは?
最初に研究・開発デザイン スタッフデザイナーの嶋 久志氏が、外装や外観について説明した。レノボに買収される以前の日本アイ・ビー・エム(株)時代から15年間デザインを手がけているという嶋氏は、レノボ(=ThinkPadシリーズ)のブランドデザインの哲学について「機能と形状のバランスを取る」「目的に即した、簡単に使える形状。ロゴを隠してもブランドが分かる“ブランド認識”」「価値を伝達する」などの言葉で説明した。そうしたコンセプトに一番当てはまる製品として、『ThinkPad 560』を挙げた。これは、ThinkPadの哲学を具現化すると「奇麗な四角形をキープして、その中に要素を詰めていくこと」であり、その完成形のひとつがThinkPad 560というわけだ。
ただ、そのデザインに固執しているわけでもない。嶋氏が所属するデザイン部門の仕事は、現在の製品デザインを進めると同時に、もうひとつのラインとして“アドバンストデザイン”を常に検討しているというのだ。
これは3年から5年後の製品を検討していくもので、現在の機構・機能や市場性などの制約を離れて、製品としてどうあるべきかをデザイナーやエンジニアなど数人のチームで考えている。そこでは日本、北米、中国、欧州の最大4ヵ所でグループインタビューなどを交えてリサーチしながら、アイデアスケッチ、クイックモデル、外観モデルなどを製作して検討を重ね、多いときには10種類ものアドバンストデザインが製作されることもあるという。
そこから派生した製品の一つが、最初に取り上げた『ThinkPad Reserved Edition』というわけだ。
また嶋氏は、IBMからレノボへの変化について、「IBM時代は、パソコンは大きな企業のなかの“ひとつの事業部”だった。しかし、レノボはパソコンの会社であり、力の入れ方や認識がまったく違う。いわば“ダイレクト”になっている。(デザイナーとしての仕事が)やりやすい半面、強く期待されているとも感じる」と語った。パソコン専業企業であるレノボには、今まで以上にThinkPadの哲学を追究し、さらにThinkPadの枠を超えた製品の登場に期待したい。