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レノボ・ジャパンのデザイン担当者に聞く

“革張り”ThinkPadも、“アドバンストデザイン”から生み出された

2007年08月29日 19時35分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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ThinkPadの歴史はCFRPと共に


大谷哲也氏

プラットフォーム機構設計担当の大谷哲也氏

続いてプラットフォーム機構設計担当の大谷哲也氏が、特にThinkPadの内部設計について説明した。ThinkPadは2005年から“クリーンシート2”という社内規格に基づいて、“Roll Cage(フレーム)構造”などの取り組みを進めてきた。これは2004年に、特に故障率が高かった高校・大学に当時のIBM社員が出向いて、利用環境などを現地で確認し、故障の原因を探ったことが生かされている。実際に現地に行ってみると、設計段階では予想もしないような使われ方を目の当たりにしたという。

例えば、無造作にパソコンをカバンに突っ込み、そのカバンを積み重ねて置いているロッカールーム。お気に入りの音楽を自転車に乗りながらも聞きたいがために、液晶ディスプレーを閉じてパソコン(HDD)を動作させたまま自転車の前かごに入れて走行する学生。あるいはスナック菓子やジュースを飲食しながらキーボードを叩き、隙間に食べかすがこぼれてしまうと、キーボードを逆さにしたり振ったりして掃除しようとする生徒たち、などだ。

スケルトンデザインのThinkPad X61

内部構造の説明のために用意された、スケルトンデザインのThinkPad X61

スケルトンデザインのThinkPad X61の背面

背面を見ると軽量化のためにハニカム構造にマグネシウム合金を削除したり、アンテナケーブルを引き回すための溝が作られているのが分かる

特に最後の例では、掃除しようとしてキートップが外れて無くなってしまうため、学校の購買部にはキートップの補充用に“歯抜け”のキーボードが積まれていたという。これに対して同社では、キーボードの隙間に落ちたゴミを取り除きたいというユーザーに対して、キートップを外れにくくするのではなく、外れてもすぐに直せる、パンタグラフ構造を強化してキートップだけが外れるようにする、液体の排出能力を向上して万一の水漏れやジュースこぼしでも内部に液体が浸透しないようにする、などの対策を行なったという。

ThinkPadのキートップは、実は簡単に外せてしまう

ThinkPadのキートップは、実は簡単に外せてしまう。ただし、パンタグラフの機構はしっかり残り、キートップだけが外れるようになっていて、掃除が簡単に行なえるというわけだ

ノートパソコンの軽量化と堅牢性の両立を目的に、『ThinkPad 700/750』世代から外装に採用してきたのが、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)という素材だ。これは文字通り、炭素繊維を樹脂(プラスチック)でサンドイッチにした構造で、最新の第6世代“ハイブリッドCFRP”(CFRPで発泡剤を挟み込んだ構造)では比重が1.0を下回り、水に浮く軽さと曲げや衝撃への強さを両立している。

ThinkPadと共に歩んだCFRPの進化

ThinkPadと共に歩んだCFRPの進化

ただし、CFRPも万能というわけではない。例えば同じ強度を実現するならマグネシウム合金のほうが薄く作れるため、重さよりも本体の厚み(薄さ)を重視するモバイルノート(ThinkPad Xシリーズなど)ではマグネシウム合金が主流になっている。ハイブリッドCFRPは現在、ThinkPad T/Zシリーズ(A4ノート、ワイドノート)などの液晶パネル背面(天板部分)などに採用されている。

また、こうした素材・材料の研究開発は多くがレノボ(旧IBM)と材料メーカーが協力して進めているが、材料メーカーは必ずしもレノボとだけビジネスをしているわけではないので、「こうした独自開発の技術も、数ヵ月や数年もすれば多くのノートパソコンメーカーで採用されることになる」と本音を漏らした。


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