UNIX系OSのユーザには馴染み深い「path」は、階層構造を持ったファイルシステムでファイルやディレクトリの場所を示すIT英単語。Windowsユーザーも知らぬ間にお世話になっているので、どういう言葉なのかを把握しておいた方がいい。ある英語マニュアルに、このような文章があった。
Although this installation path is the fastest one, you will need to install some software before installing Geronimo.
果たしてpathは、どのような意味で使われているのか。「リーダーズ英和辞典」(研究社)で調べてみた。
path
小路、通路、進路、方針
ということは、先の英文を訳すと以下のようになる。
この「インストールの進路」はもっとも早いものですが、「Geronimo」をインストールする前にいくつかのソフトウェアをインストールする必要がある。
このようにpathは、オペレーションの道筋つまり手順(この場合はインストール)といった意味で使われている。エンジニアの仕事は、物事を順々に組み立てていくものが多いため、過程や順序が重要であるし、それを示唆する言葉を頻繁に使うことにもなる。そこで「スタートからゴールへといたる順路」という意味でpathを多用しているのだ。
さて、冒頭で触れたように、pathはファイルやディレクトリの場所を示す言葉としても使われている。たとえばWindowsのコマンドプロンプトで、「calc」というコマンドを入力すると電卓が表示される。これはこのプログラムを実行するためのPATHが存在するからだ。それは、どういうことかというと……。
コマンドプロンプトで「path」と入力すると、以下のような情報が出力される。
PATH=C:\Program Files\ThinkPad\Utilities;C:\WINDOWS\system32;
C:\WINDOWS;C:\WINDOWS\System32\Wbem;C:\Program Files\Intel\
Wireless\Bin\
これは、入力したコマンドに対応したプログラムを実行するために参照されるディレクトリの一覧だ。これを見ても分かるように、pathは特定のディレクトリを指している。つまり、pathとはファイルやディレクトリ(フォルダ)のコンピュータ内での住所にあたるものと考えられる。おや? pathは順路を意味する言葉ではなかったか?
ファイルやディレクトリを収納する構造は、UNIX系OSではルートディレクトリ(「/」で表示)、Windowsではドライブ名(「C:\」などで表示)を頂点とするピラミッド型の構造をしている。一見、ファイルやディレクトリの所在地を示しているように考えられるpathは、実はピラミッド構造に沿って所在地までの「道」を記述しているのだ。ちなみに、ピラミッドの頂点から目的のファイルやディレクトリまでのすべての道筋を記述しているpathを「絶対パス」、現在位置を起点に目的のファイルやディレクトリまでの道筋を記述しているpathを「相対パス」という。
pathというIT英単語は、コマンド内で出会うことが多い。そのため、コンピュータ内での住所というニュアンスで理解している人が多いだろう。だが、スタートからゴールへといたる順路という本来の意味を把握しておかないと、マニュアルや技術書でpathを目にしたときに、その文脈を理解できずトラブルが発生することも考えられる。いらぬミスを防ぐためにも、英単語の本来の意味を把握しておこう。
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Illustration:Aiko Yamamoto

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