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石井裕の“デジタルの感触” 第4回

石井裕の“デジタルの感触”

タンジブル・ビット:ビットとアトムを融合する新しいUI

2007年08月06日 17時08分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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TUIの4つの特徴


 TUIの備える4つの特徴を整理すると、まず挙げられるのは直接操作性だ。GUIにおけるインタラクションは、マウスのようなリモコンによる間接的な操作であり、かつ視覚的・聴覚的なインタラクションに限定される。それに対してTUIは、タンジブルな情報の外部表現をインタラクションの制御メカニズムとしても同時に利用できる。情報と計算に対する直接操作性を飛躍的に高め、個々の情報に特有の触覚的なフィードバックをインタフェース・デザインに生かすことを可能にするのだ。この直接操作性の向上には、「タンジブルな表現=制御」というTUIの原理から導かれる「入力空間と出力空間との一致」という特性が大きく貢献している。

 2つめの特徴は、先にも述べたタンジブルな表現とインタンジブルな表現のシームレスな融合にある。情報の物理的な外部表現の欠点は、内部のデジタル情報の変更に応じて、ダイナミックに物理表現を変えられないことだ。GUIがピクセルを並べ替えて容易に姿を変えるのに対して、実体を持つモデルの形や大きさ、色などを変化させることは困難極まりない。この問題を解決するために、TUIではタンジブルな物理的な外部表現とインタンジブルな表現を重畳させて、シームレスにつながるハイブリッドな情報表現を積極的に利用する。個々のTUIが成功する鍵のひとつは、タンジブル/インタンジブルな表現が知覚的に「ひとつ」の連続した情報表現として、ユーザーに認知されるかどうかにある。

 3つめは、GUIと異なりTUIが汎用的なインターフェースを目指していないことだ。TUIは特定のアプリケーションにおける操作性の向上を目的に、特化した専門インターフェースを指向する。特に、その分野で長年培ってきたスキルや経験を生かし、物理表現の操作性や直感的な理解のしやすさをデジタルの力で増大させるというのが基本理念である。都市計画で建築模型を用いるがごとく、コンピューターが普及する以前に、物理的な表現メディアやツールで培った体験と連続性・親和性を保ちながら、デジタル技術を自然なかたちで取り込むことをTUIは狙う。

 最後にTUIの最も重要な特徴は、空間的に多重化された入力(space-multiplexed input)を自然なかたちで支援するということにある。タンジブルな情報表現は、それぞれが独自の空間を占める専用の制御装置として機能するため、両手を使った並行操作や、複数のユーザーによる同時並行的な処理を自然にサポートできる。時間的に多重化された入力(time-multiplexed input)を提供するGUIでは、ユーザーがひとつの入力デバイスを異なる目的の間で時系列的に切り替えながら、ひとつひとつ機能を実行するために使用する。TUIと大きく異なるポイントだ。

 今回は硬い説明になってしまったが、次回からは具体例を紹介しながら、TUIの特徴と応用について話を深めていきたい。

(MacPeople 2005年10月号より転載)


筆者紹介─石井裕


著者近影

米マサチューセッツ工科大学メディア・ラボ教授。人とデジタル情報、物理環境のシームレスなインターフェースを探求する「Tangible Media Group」を設立・指導するとともに、学内最大のコンソーシアム「Things That Think」の共同ディレクターを務める。'01年には日本人として初めてメディア・ラボの「テニュア」を取得。'06年「CHI Academy」選出。「人生の9割が詰まった」というPowerBook G4を片手に、世界中をエネルギッシュに飛び回る。



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