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週替わりギークス 第285回

お仕事悩み、一緒に考えます。#39

仕事に感情を持ち込む上司ってどうですか?

2023年09月02日 07時00分更新

文● 正能茉優

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働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!

 「こんな働き方はもう嫌だ」「仕事がなんだか楽しくない」。
 誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。

 何か困っていることや考えていることがあれば、匿名でももちろん大丈夫です。こちらまで気軽にメッセージください!

今回のお悩みは「仕事における感情」について

 ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。

 この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。

 今月のテーマは、先月に引き続き「仕事における感情」の取り扱い方について。皆さんも仕事において、内心イライラしたりモヤモヤしたり、それらが何らかの形で表出したりすることがあるのではないでしょうか?

イライラ、モヤモヤ、そして涙。仕事における「感情」の取り扱い方に悩んでいます。

 正能さん、はじめまして。
 私は新卒で勤めているIT企業に勤め、今年で4年目になります。

 今年度からサブマネジャーという新しい役職につきました。
 マネジャーの意向を踏まえつつ、現場のメンバーをマネジメントしていく、いわゆる現場リーダーのような仕事です。

 メンバーの一人として仕事をしてきたこれまでとは違い、思うようにいかないことも増え、最近はその都度発生する自分の感情に悩まされています。

 例えば、自分の部下にあたるメンバーに丁寧に指導・アドバイスしたつもりでも泣かれてしまったり、上長にあたるメンバーに事前にこまめに報告をしていた内容について叱責を受けたり、一つ一つのことは大したことではないのですが、小さなイライラ・悔しさ・不甲斐なさが日々たまっている感じです。

 たまっているだけならまだいいのですが、どうしても我慢できないとき、上司との面談で涙が流れてしまったり(リモートだからバレていないかもしれませんが)、それ以外の時にも自分のイライラやネガティブな感情がメンバーに伝わってしまったりしているようにも思えて、それによってチームのモチベーションや心理的安全性が揺らがないかということも気になります。

 単純に「我慢しろ」という話のような気もするのですが、やはり感情というのはそうもいかない部分もあり。
 そんなときSNSで正能さんが「仕事における感情」について研究されているというのを見て、連絡しました。

 「仕事における感情」って、正直どう取り扱うべきものなのでしょうか?単純に我慢できない自分のようなケースの場合の考え方を教えてもらえると、うれしいです。
 (ケイスケさん(仮名)・28歳・会社員)

「仕事における感情」については、学術的な研究も進んでいます

 ケイスケさん、改めてお便りをありがとうございます!前回に引き続きお答えさせていただきますね。

 まず、学術的な研究においてこの「感情」というテーマを取り扱うには、「○○学」と呼ばれる理論的枠組み、つまりはいくつもの眼鏡が存在していて、どの“眼鏡”をかけて感情を取り扱うかによって、検討の方向性は大きく変わってきます。

 というのも、感情は、神経科学・社会学・心理学・経済学などのあらゆる分野で研究されており、感情という概念を具体的に定義することは難しい[1]とされているんです。

 だからこそまず、どの眼鏡をかけて、感情を取り扱うのかということが最初の分かれ道になるのですが、中でも今回は、私が過去に研究していた「経営学(における組織論における制度論)」という眼鏡をかけて、「仕事における感情」について、お話をさせてください!

 ということでまずは、言葉の定義から。

 これまでの組織研究においては、「感情」[2][3]という言葉は、一般的に様々な感情現象を表す包括的な用語として用いられてきました。「感情」のもう一つ大きな概念は「情動」という存在で、この「情動」は「感情」と「気分」の2つのカテゴリーから構成されています[4][5]。

 「気分」はより広く一般的なポジティブまたはネガティブな感情(例えば、良い気分、悪い気分)の形をとり[2]、そもそもその気分を引き起こしたであろう出来事や状況とは結びつかない[6]のが特徴です。これに対し「感情」は、特定の対象や原因によって引き出され、しばしば生理的反応や行動を伴い、比較的激しく、短時間しか保持されない傾向がある[2][7]とされています。

「感情」が着目されるようになったのは、実はこの10年ほどのこと

 そんな感情の存在が、制度研究において着目されるようになったのは、実はここ10年ほどのこと。

 というのも、これまでの制度研究において、学者たちは、組織というものは「意図的に合理的」であると想定していたため[8]、制度や組織における感情の存在は、個人レベルの分析を扱う研究においてさえ、多くの実証研究で扱われてきませんでした[9][10]。

 (※制度研究の初期に感情の潜在的な重要性が議論された研究は数多くありました[11][12]が、当時この分野の研究は認知・行動主義的な考え方に支配されており[13]、感情の役割に着目した研究は制度研究において主流とはなりませんでした)

 しかし最近では、感情がどのように制度を創造し破壊し維持するかを扱った研究[14][15][16]や、制度プロセスにおいて感情と認知がどのように相互作用するかを扱った研究[17]が進むなど、感情が制度や組織に及ぼす影響について幅広く分析が進んでいます。

「感情」の存在を一口に取り扱うのには無理がある

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