「Twitterは、日本が中心」という、イーロン・マスク氏の発言が話題になっている。
もう少し発言の正確な文脈を知りたいと考え、調べてみると、米国のテック系ニュースサイトThe Vergeが出どころだった。
The Vergeが2022年11月22日に公開した記事を確認すると、「日本が中心」という見出しが日本で独り歩きしているのではないか、と考えさせられる。
同サイトが報じたのは、ツイッター社内の会議でのマスク氏の発言だった。
確かに世界的に見て日本のTwitterのユーザー数は極めて多いのだが、むしろ発言の意図は、米国中心の技術チームを世界各地に分散する必要性を主張するものだったようだ。
マスク氏はツイッター社買収後、3週間で7500人いた従業員を3分の1にリストラした。
今後、同社は従業員の採用を再開し、人員の再配置を進めると予測されている。
マスク氏率いる”ツイッター 2.0”は、日本で技術系人材の採用を強化するのだろうか。
日本のTwitter人気はたしかに高い
The Vergeが報じたマスク氏の発言は、「Twitterは米国中心のように思われているが、どちらかと言えば日本が中心だ」という内容だ。
「日本中心(Japan-centric)」というマスク氏の言葉には根拠がある。
さまざまな統計情報を提供するウェブサービスStatistaによれば、日本のTwitterのユーザー数は、米国に次いで2番目だ。2022年1月時点でユーザー数の多い5ヵ国は以下のようになっている。
- 米国:7690万
- 日本:5869万
- インド:2360万
- ブラジル:1905万
- インドネシア:1845万
米国の人口が約3億3000万人、日本が約1億2000万人であることを考慮すると、人口1人あたりのユーザー数は、日本が上回る。
さらに、具体的な統計は確認できなかったが、日本のユーザーのツイート数やリツイート数などのデータも、マスク氏の発言の背景にはあるのだろう。
The Vergeの記事も、ユーザー数のデータなどを反映し、日本、インド、ブラジル、インドネシアなどに技術系人材を分散配置する可能性があると伝えている。
新興国に商機?
Twitterの国別ユーザー数の数字を見ていて、気づいたことがある。
注目すべきなのは、日本が2位だという点よりも、むしろ3位以下の国々なのではないだろうか。
インド、ブラジル、インドネシアの3ヵ国は、いずれも日本より人口が多い。そして、いずれも、世界中のIT企業が有望な巨大市場として注目している国々だ。
マスク氏の発言には、むしろこうした国々の伸び代に注目し、エンジニアの配置も強化し、新たなユーザー獲得に力を入れていくという意図があるのかもしれない。
マスク氏はThe Vergeの記事が公開された11月22日、次のように投稿している。
「Twitterは先週、160万人のデイリーアクティブユーザーを追加し、また過去最高を記録した」「これは、Twitterが北米、西ヨーロッパ、日本以外で高速に利用できるようになれば、大幅に改善されるだろう」
こうしたツイートからも、欧米や日本を中心としたマーケティングから、アジアや南米の新興市場に戦略を転換するのではないかと思える。
真意はどこに?
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