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女性のキャリアについてのお悩み
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
今月も、パーソルキャリア株式会社の新規事業企画、ハピキラFACTORYの代表、そして慶應義塾大学大学院の特任助教と、3つのお仕事をしています。
さて、この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今月のテーマは、先月までの「越境人材」とは打って変わって、「女性のキャリア」について。
この春に社会人になったばかりの女性から、こんなご相談をいただきました。
性別によるキャリアの差がイメージできず、不安です。
正能さん、はじめまして。私は正能さんと同じ大学に通っていた者です。
この春、大学を卒業し、やや大きめのIT企業に就職しました。
まだ慣れない部分はありながらも、研修を経て、少しずつ現場に出る機会が増えている昨今です。
仕事については「まだよくわかっていない」というのが正直なところですが、今のところ、楽しくやらせてもらっています。
なので、こんな相談をこのタイミングでするのもちょっと悩んだのですが、聞かせてください。
女性のキャリアって、何がどう難しいのですか?
研修では、性別による差を感じる瞬間は特になかったし、今も同じ部署に配属された同期の男性社員と似たような仕事をしています。
でも、会社の全社メールでは「女性の管理職を増やします」というメールが来たり、久々に見てみた会社の公式サイトには「女性活躍」について特集されていたり。
あとは、部署の先輩(えらい人?)が、男性の方が圧倒的に多かったり。
女性の活躍について、こんなにも会社が発信するということは、きっと「“女性だから”うまくいかないこと」が、今後色々とあるんだなと不安な気持ちになっています。
新人の今は、それこそトレーナー(女性)と行動する機会が多いのですが、このトレーナーにこの悩みを聞いてしまうと、「あなたは、こういう理由で将来困るの?ね、そうでしょ?」と突きつけてしまう嫌な後輩みたいで、なんだか聞きづらいです。
そこで、正能さんに連絡させてもらいました。
正能さんは「“女性だから”うまくいかないこと」、体感していますか?
この先にどんなことが待っているのか心算をしておきたい&この記事を読んでいる男性にもその内容を見てもらいたいので、取り上げてもらえるとうれしいです。
(小西さん・23歳・IT企業 営業新卒)
男女差というよりも、個人差になりつつある感覚です
大学の後輩なんだ!とうれしく思いながら、お便り拝見しました。
小西さんのおっしゃる通り、女性の悩みって、男性にも聞けないし、近いところにいる女性の先輩にも聞きづらいものですよね。
やや離れたところにいる私にだからこそ聞けるその感覚、とってもわかります。
私が社会人になった2014年は、今ほど女性活躍に関する情報も多く発信されておらず(気にしてなかっただけかな……)、小西さんが今感じているような違和感・不安を、私はそこまで感じることもなかったのですが、たしかにそんな情報を見たら、心細くもなるよなと、共感してしまいました。
私の場合、新卒で入った大手広告代理店のとある部署が、非常に男性の多い部署だったので、「え、女の人って、社会のどこにいっちゃうんだろう?」と不安になったのを覚えています。
ちなみにその直後、女性用の下着や化粧品の担当をすることになり、逆にそこには女性が多くて「あ、女の人がいた」と妙に安心したこともありました。(苦笑)
さてさて、ご質問いただいた、キャリア上の「“女性だから”うまくいかないこと」ですが、「(女性に工数が偏りがちな)ライフイベントに伴う、うまくいかないこと」は正直、あります!そして、今後もジャンジャンあると思います!(苦笑)
ただこれらのうまくいかないことは、今は女性にしかできない「妊娠・出産」以外の多くの場合は、性別という概念が記号として非常にわかりやすいからこそ、「本来は個々人による差を、性別の差として解釈している」という表現の方が的確かもしれません。
ライフイベントは、女性に工数負担が行きがちに
例えば、私が入籍したときのこと。
入籍して名前が変わると、銀行口座やパスポート、クレジットカードなどの名義を変更しなくてはならないのですが、この手続きのために会社の半休を取ったときには、「女性って面倒だな。一つ一つは小さいことかもしれないけれど、こういうことの積み重ねで、キャリアが停滞する・邪魔されているという感覚になるんだろうな」と正直思いました。
ただ、入籍をして、妻側の姓を選ぶケースもあるわけで、この場合は工数負担が男性サイドにいくわけで。
(とはいえ、入籍をして夫側の姓を選ぶケースが95%以上の中、多くの女性がこうしたことに時間を使っているのは事実です。)
そう考えると、小さなことではありますが、入籍して名前を変えることに始まり、家事も育児も、介護も、それらを誰が全うするのかに性差はないはずなのですが、「これらは、女性がするものだよね」というこれまでの当たり前が、結果として性差を生み出しているように思います。
「女性だから」というよりも、「女性側が工数を割くものであるケースが多いから」という方が表現としては適切かもしれません。
こうした「結果として性差になる物事」について私たちが今できることとしては、一つ一つの負担がどちらかにとって過多にならぬよう、パートナーと話し合ってやっていけばいいのかなと個人的には考えています。
社会に埋め込まれたステレオタイプは、ある
とはいえ、社会に埋め込まれた「これらは、女性がするものだよね」というステレオタイプな感覚を、思わぬところで感じることもあります。
例えば、会社の関係者に結婚の報告をするとき。
「どんな報告するのがいいのだろう?」と検索して出てきた結果が、「X月Y日に入籍することになりました。(中略)なお、仕事は続けます」だったときにはびっくりしました。「結婚即ち専業主婦」みたいな前近代的な報告ある?みたいな。(笑)
私はまだ、出産や育児、介護などのライフイベントを経験していないので、数少ない経験からの話ですが、パートナーや会社で日々接しているメンバーの立ち振る舞いが性別に対してフェアであっても、社会に埋め込まれた感覚に触れて、少しウッとなることがこれからもあるんだろうなと思ったりもします。
小西さんにご質問いただいた心算としては、「へえ、昔はこれが当たり前だったのね。古いねえ」とちょっと面白がるくらいの気持ちで、世の中の当たり前が変わっていくまでのしばらくの間は、心穏やかにいてもらいたいです。(苦笑)
とはいえ男性という記号で、男性も大変なんだろうなと思うことも
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