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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第155回

日本のステーブルコイン、銀行に有利?

2021年11月29日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 日本の大企業もステーブルコインの普及に本格的に取り組むのだろうか。

 日本の大企業74社が参加する「デジタル通貨フォーラム」が2021年11月24日、デジタル通貨「DCJPY」(仮称)構想のホワイトペーパーを公表した。

 24日のNHKの報道によれば、このグループは、2022年3月までにデジタル通貨の実証実験を始め、22年度中の実用開始を目指すという。

 企業グループの公表資料は「デジタル通貨」や「民間発行デジタル通貨」という言葉を使っている。

 しかし、グループの構想は、ホワイトペーパーを読む限り日本円と連動する法定通貨担保型のステーブルコインに限りなく近い。

銀行による発行を想定

 このデジタル通貨フォーラムには、いわゆる3メガバンクを始めとした金融機関、生保、損保会社、イオン、ANA、SBI、電通や大手商社、コンビニなど、ほとんどの人が知っている大企業が名を連ねている。

 では、企業グループが発行を目指すデジタル通貨とはどんな内容なのだろうか。

 DCJPYの特徴は、日本円と完全に連動し、銀行が発行することを前提とする点だ。

 実際には、構想はもう少し複雑だが、ユーザーとしては、おおむね次のような使い方が想定されている。

  1. 銀行に口座を作って、日本円を預ける
  2. 銀行口座の預金からDCJPYを発行してもらう
  3. DCJPYを送金や、買い物に使う

 DCJPYの発行や送金といった取引は、ブロックチェーン上に記録される。この点からも、「民間発行デジタル通貨」はステーブルコインの一種と考えてよさそうだ。

 DCJPYの発行は、ユーザー目線のイメージとしては、交通系電子マネーやQRコード決済の「チャージ」に近いものがある。

 スマホの決済アプリは、銀行口座やクレジットカードから残高をチャージするが、チャージの段階で預金も減る。

 構想では、余ったDCJPYを日本円と交換することも想定されている。

 ここまでは、ユーザーの立場としては、従来の決済アプリを使うのとあまり変わらないかもしれない。

スマートコントラクトの実装目指す

 デジタル通貨フォーラムの構想では、スマートコントラクトの実装も想定されている。

 たとえば、通信販売には「代引き」(代金引換)という仕組みがある。

 インターネット通販で商品を注文し、商品が届いた際に、代金と引き換えに商品を受け取る。

 この際、ユーザーは財布から現金を出したり、クレジットカードやスマホで支払いをする。

 この取引にスマートコントラクトを実装すると、イメージとしてはこんな流れになる。

 ユーザーは、購入の際にDCJPYによる代引きを選択する。

 おそらく、この時点でユーザーと事業者は、「商品が届いたら支払いをする」という契約を交わす。

 運送会社のドライバーが商品をユーザーの自宅に届けた時点で、引き渡しを記録する。

 その時点で、ユーザーの口座からは自動的にDCJPYが引き落とされる。

 上記はホワイトペーパーの内容から筆者が想像したものだが、スマートコントラクトが実装された場合、おおむねこうした取引の流れになるのだろう。

 フォーラムには、ヤマトホールディングスも参加している。

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