世界各国で、デジタル運転免許証が広がりつつある。
2021年8月19日の人民網日本語版によれば、中国は2022年にデジタル運転免許証を全面普及させるという。
欧州連合(EU)は6月3日付のプレスリリースで、EU域内で共通のデジタル身分証明書を導入すると発表した。
米国では、アップルがiPhoneに身分証明書や運転免許証を搭載する準備を進めている。
日本でも、運転免許証をマイナンバーカードに統合する方向で検討が進む。政府は、2024年度末までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を開始する方針だ。
EUは学位もデジタル化?
EUが公表した構想によれば、デジタル身分証明書は、欧州デジタル・アイデンティティ・ウォレットと名付けられている。
加盟各国の政府が、国民にデジタルウォレットを提供し、国の身分証、運転免許証、学位、銀行口座などとひも付ける。
プレスリリースの中で欧州委員会の委員の一人が、税金の還付、欧州域内の大学への入学、空港のチェックイン、レンタカーを借りるといった、デジタル身分証明書の使い方を説明している。
やはり、ポイントは、EU加盟国全域で単一のデジタル身分証明書が使えるという点だろう。
イタリアに住んでいる人が、フランスの大学を卒業し、ドイツの企業に就職する際に、デジタルウォレットを使って、身分証明書と学位記を提出するといった近未来像が頭に浮かぶ。
個人情報の自律的なコントロールが強調されている点も重要だ。ウォレットをどう使うか、使わないかは個人に委ねられる。
日本のスマホ搭載のスケジュールは不確定
日本でも、議論はけっこう進んでいる。
参考になるのは、2020年12月に政府が公表した「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」という報告書だろう。
この報告書は、2024年度末に、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を始めると明記している。
一体化することで、引っ越しをした際に、住所変更の手続きをワンストップで完了できるという。
たしかに引っ越しをした際には、市区町村の窓口と、警察の窓口の両方に出向くことになるので、手続きが1つ減ることになる。
さらに、最寄りの警察署でなくても、運転免許証の更新手続ができたり、更新時の講習をオンラインで受講できたりするという。
ただし、この報告書で明確に述べられているのは、現行のマイナンバーカードと運転免許証の一体化までにとどまる。
運転免許証のスマホへの搭載については、以下のような控えめな表現にとどまっている。
「モバイル運転免許証の国際規格の策定状況及びマイナンバーカードのアプリ化の検討状況も踏まえ、諸外国との相互運用性の確立も視野に、運転免許証の在り方の検討を進める」
気になるのは、「諸外国との相互運用性の確立も視野」との記述だ。国際運転免許証がなくても、日本の免許で運転ができるようになるといいな、と思ってしまった。
アップル、顔認証を使った本人認証を準備
政府側の検討・準備の一方で、スマホメーカー側の準備も重要だ。
アップルは、iOS 15で、現行のFace IDに似た顔認証技術を使って、政府発行の身分証明書の認証もするという。
ただ、通常の顔認証と違って、目を閉じたり、眉毛を持ち上げたり、笑ったりという表情の変化も記録すると報じられている。
複数の表情のパターンを記録するのは、従来型のパスワードに記号や数字を加えたり、桁数を増やしたりして複雑にする方法を想起させる。
中国は6月から一部の都市で電子運転免許証の試行を開始しており、2022年から全面普及を始めるという。
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