アフリカや中南米などの国々を旅行する際に、「イエローカード」をもらうことがある。
黄熱に感染するおそれのある国に入国する前に、病院でワクチンの予防接種を受ける。
予防接種が終わると、文字通り黄色い紙の証明書をもらい、パスポートに挟んでおく。
目的地の国に到着したときに、パスポートとともにイエローカードを提示する。
新型コロナウイルスの世界的な大流行をきっかけに、イエローカードのような証明書をデジタル化する取り組みが進んでいる。
世界経済フォーラムを中心に開発された、全世界共通の「コモンパス(CommonPass)」というデジタル証明書アプリだ。
JAL(日本航空)は2021年4月2日、コモンパスを使って新型コロナウイルスの陰性を証明する実験を始めた。
世界各国で新型コロナのワクチンの接種が進んでいたり、遅々として進んでいなかったりするが、国境を越えた人の移動の本格的な再開を目指すうえで、「接種済み」や「陰性」を証明する方法について、可能な限り速やかな国際ルールの確立が求められる。
●にせの陰性証明書業者
少し前の出来事になるが、ニューヨーク・タイムズが2020年6月16日付で、偽造の陰性証明書に関するニュースを報じている。
バングラデシュの首都ダッカにある病院のオーナーが、同国の警察当局に逮捕された。このオーナーは、数千人に対して、新型コロナの陰性証明書を売ったが、実際には検査は実施していなかったという。
価格は59米ドル。最近のレートで円に換算すると6500円ほどだ。雇用が限られるバングラデシュからは多くの人々が、職を求めてヨーロッパに向かう。日本に来る人も多い。
その際に、陰性を証明する書類が必要となるため、ダークなビジネスが流行したようだ。この記事は「こうした証明書の巨大な市場が存在する」と指摘している。
紙の証明書は、比較的容易に偽造することができる。
国ごと、あるいは医療機関ごとに書類の様式が異なれば、入国審査のカウンターで「この証明書は本物か」と問いつめられる人が出て、長い行列ができるかもしれない。
こうした課題の解決を目指すアプリが、世界共通のデジタル証明書「コモンパス」だ。
●世界規模のアプリ開発プロジェクト
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