人が来ないからこそ使われる場所
飛行機、船舶、電車、自動車……。あらゆる交通機関が発達した今日、地球上であれば、誰もがどこにでも基本的に行けるようになりました。頑張れば宇宙にだって行けちゃいます。が、そんな世の中でも、“どう頑張っても行くことがムチャクチャ難しい”場所が存在します。関係者以外立入禁止とか、そういう場所ではありません。物理的に行くことが難しい場所です。それが、“到達不能極”。陸上においては海から一番遠い場所、海上においては陸から一番遠い場所を指します。そのため、絶対行けないというワケではなく、頑張れば不能極といえども到達できます。なので、到達困難極などとも言われています。
到達不能極はいくつかありますが陸上で最も海から遠い場所(2645km)になるのが、中国のウルムチからおよそ320kmほど離れた地点です。既にここに到達した人間もいるのですが、いったいどうやってこの地点まで行ったのかがかなり気になります。平地だったらまだしも山の中とかだったら最後絶対これ徒歩とかになりますね……。
反対に、海上の到達不能極は、陸地から約2700km離れた太平洋の地点になります。ニュージーランドとチリのほぼ真ん中にあたりますが、まぎれもなく海の上になるので、目標物などはなく、地理座標をたよりに船で行くしかありませんね。今はGPSがあるので、受信できる装置があれば、こちらもなんとか行けそうな気がします。
むしろ、陸上や海上の“この地点”より、うっそうとした山や森の中、砂漠のど真ん中のほうが人間行っていないんじゃないか? と思うのですがどうなんでしょう。素人感覚ですが、アマゾンの森の中で、近くに道も川もない場所などがあれば、絶対にそこには寄り付けないような気がせんでもないです。
ちなみに、日本(陸上)における到達不能極は“長野県佐久市”とのことで、海から115km離れています。付近の住民はさっと行けそうですが、海沿いに住んでいる人にとっては確かに行くまでのハードルが高そうです。
そんな到達不能極ですが、実のところ、人為的に利用されている場所があります。それが先ほどの“太平洋における到達不能極”です。
最も陸地から離れた太平洋の地点、つまりこことその周辺には人間がいないことが期待されます。また、このあたりの環流(南太平洋環流)はその内部に海水が入るのを邪魔していて、かつ、陸からも遠いため風に乗って飛んでくる有機物も少なくなります。そのため生物すらあまり生息していない地点でもあります。
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