スマホ決済サービスのAlipay(アリペイ)などを展開するアントグループが2020年11月3日、株式上場を延期すると発表した。
10月26日のウォールストリートジャーナルによれば、香港と上海の証券取引所合計で344億ドル(約3兆6000億円)と史上最大規模の新規株式公開(IPO)になると注目を集めていた。
上海証券取引所が11月3日に発表したプレスリリースによれば、アリババの創業者で実質的にアントグループの経営権を握るジャック・マー氏が、中国の金融当局に呼び出された。
同取引所は「フィンテックの規制環境を変化させる重要事項」を当局に報告したことから、上場の要件を満たさない可能性があるとした。
アントグループのIPOは5日に予定されていただけに上場延期への反響は大きく、アリババの株価は急落した。
●いまも「最高管理者」のマ-氏
アリペイが近所のコンビニで使えることは知っているが、日本語環境で生活している限り、正直、アントグループの名にはそれほどなじみがない。
アントグループは、アリペイの親会社だ。ウェブサイトによれば、2004年に創業したアリペイは、全世界に約13億人のユーザーがいるという。
日本のモバイル決済PayPay(ペイペイ)のユーザー数を確認してみると、7月に3000万人を突破したと発表している。現時点では、両社の決済サービスとしての規模は大きく異なる。
実名は伏せられていたが、上海証券取引所のプレスリリースで、アントグループ最高管理者(ultimate controller)と呼ばれていたのが、中国のネット通販最大手アリババを創業したマー氏だろう。
マ-氏は2年前に引退を宣言しており、アントグループがウェブで公開している幹部名簿にもその姿はない。
しかし、金融当局からの聴取を受けた幹部にマー氏が含まれていたことで、グループの実質的な経営者はいまもマ-氏だと、中国政府がみていることがわかる。
●規制環境を変える重要事項とはなにか
中国語版に加えて英語版も公開されている上海証券取引所のプレスリリースを熟読すると、ポイントは「フィンテックの規制環境を変化させる重要事項」であると思われる。
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