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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第95回

なぜ東証は止まったのか 繰り返されるトラブルの共通点

2020年10月05日 12時00分更新

文● 小島寛明

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 東京証券取引所が止まった。

 2020年10月1日朝から、市場は大きく動揺した。

 短時間で復旧するとも思われたが、東証はこの日、一日中取引を停止した。

 すべての銘柄の売買を終日停止したのは、電子システムによる取引に全面移行してから初めてのことだという。

 東証は、上場している企業の時価総額で世界3位の規模とされる。それだけに、売買停止の影響は計り知れない。

 世界中の投資家が、1000分の1秒単位の高速取引をする取引所のシステムは、極めて堅牢なイメージがある。

 しかし、実際には1999年5月に電子システムに移行してから、トラブルが繰り返されてきた。

●原因はサーバーのメモリーの故障

 取引所のシステムが止まったと聞くと、サイバー攻撃を想像してしまうが、東証の発表によれば、売買を止めた原因は次のようなものだ。

 1日午前7時すぎ、株価などの相場情報を配信するサーバーのメモリーに故障が発生した。

 設計上は、サーバーに故障が発生した場合、バックアップ用の「2号機」に切り替わるシステムが構築されているが、切り替えが行なわれなかったという。

 こうした処理は、フェイル・オーバー(fail-over)と呼ばれている。特定のサーバーにエラーが出たときに、別のサーバーに自動的に切り替えることで、障害の発生を迂回する。

 この処理が自動的に行なわれなかったことが、史上初の終日取引停止につながった。

 通常、午前9時から売買が始まるが、東証はその直前にあたる午前8時54分に取引を停止する措置をとった。

 1日夕方に開かれた東証の記者会見によれば、当初は売買の再開も検討したという。

 しかし、売買の再開にはシステム全体の再起動が必要になる。再起動をした場合、これまでに出されていた売り注文や買い注文がリセットされてしまうため、機関投資家や個人投資家など市場参加者に大きな混乱が想定される。

 この結果、取引時間中のシステムの再起動は見送り、終日の取引停止を決定したという。

●8年前にも取引停止

 東証では8年前にも、今回と共通点のあるシステム障害が起きている。

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