自然が生み出した天然の原子炉
さてさて以前に、“地球上に太陽を作る”という、核融合発電のお話をしました。現在使われている火力や水力、風力、地熱など、昔の人たちで言う“自然の四大元素”に加えて、太陽光をはるかに上回る、究極の自然由来のエネルギー“太陽”を科学の力で実装してエネルギーを得よう! という核融合発電ですが、その反対の核分裂発電、つまり“原子力発電”は自然とは言えないのでしょうか?
原子力発電の際利用されている“核分裂反応”は、長らく自然界においては自発的に発生しないもの、つまり、人間の科学の力以外に地球上ではお目見えできない、と言われていました。が、実はこの地球上に、自然と核分裂反応が起こっている場所があったのです。そこはガボン共和国にある“オクロ”。ガボン共和国はアフリカ大陸中央向かって左、ギニア湾に面している、人口200万人超くらいの国です。この国のオクロ鉱床と呼ばれる場所で、自然と核分裂反応が起こっている場所が発見されたのです。まさに“天然の原子炉”です。原子炉と聞くと、あの膨大なエネルギーと同時に、放射線の影響を思い出し、それが自然にあるとなるとちょっと怖くなってしまいますが、実際に原子炉としてエネルギーを放出していたのは今から約20億年前、そしてそれは数十万年続いていたと想定され、平均で100キロワットくらいの出力だったそうです。私が子供の頃その展示館に行った、鹿児島の川内(せんだい)原子力発電所で89万キロワットですから、天然原子炉の規模はぜんぜん小さいですね。が、数十万年継続して出力していたことを考えると、累積でかなりのエネルギーが出ていたことでしょう。核分裂反応も起こしていますから、その時代に近づいていたら危なかったと思われます。
オクロ鉱床で16カ所見つかったこの天然原子炉、一部が研究用として保存され、なんでも現在の原子力発電における核廃棄物の“地層処分”の観点で、重要視されています。20億年前の現象が現在に役立てられるなんて何とも不思議ですが、これには放射性物質の特性が関係しています。
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