死後の状態を観察する研究
2時間サスペンスドラマに欠かせないものといったら、そう、“殺人事件”。何らかの事件に巻き込まれた人間のご遺体が見つかり、刑事さんたちがその人を殺めた犯人を捜し、追い詰め、逮捕する──という流れが一般的ですが、その犯人を捜すうえでだいたいキーとなっているのが“死亡推定日時”と“死因”。検視官とか法医学者が割り出しているものですね。
人間は死んでしまうと、時間の経過とともに身体の変化が起こります。その変化はだいたい誰もが共通した過程を経ていきますが、やはり気候やそのご遺体の背格好や年齢などにより、その過程に至るまでの時間や状態が異なってきます。
人間の体が、ある状況下において死後どのように変化していくかを研究する施設、それが“ボディーファーム(死体農場)”です。もう字を見ただけで「うっぎゃあぁぁああ!」となるか、何も言わず「……ゴクッ」と唾を飲み込むかの二択になりそうなくらいパワーがあるワードです。法医人類学の研究施設であるこのボディーファームは、アメリカの複数の大学に設置されており、冒頭にあったような殺人事件に伴うある程度正確な死亡日時の割り出しや、犯人特定につながる捜査などにその研究を役立てています。そして、どうやって研究を行っているのか? ですが、“実際の人間の死体をこのボディーファームの敷地に設置”して、観察やそれに伴う分析などを行っています。そう、これが死体農場といわれる所以なのです。
と、いうことで、今回はなるべく丁寧にオブラートに包みはしますが、生々しいお話が苦手な方は、死体農場なる法医学研究施設があり、犯罪解決に一役かっている、ということをここまでで知っていただき、“まわれ右!”が良いかもしれません。むむむ、ちょっと怖いけど、科学観点のヒトの死後のプロセスは気になる、という方は、ぜひこの先に進んでください!
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