切っても再生といえば懐かしいプラナリア
さて、少し前にお送りした“遺伝子”のお話。実のところ、遺伝子にはたくさん種類があって、ヒトでは約2万5千種類もの遺伝子があります。そんな遺伝子には、その種類によって固有の名前が付けられていますが、中には二度見(二度聞き)するような名前の遺伝子も存在します。個人的にそのひとつが『ノウダラケ(nou-darake)遺伝子』。
ノウダラケ……脳だらけ……脳だらけ遺伝子!? 脳をたくさん作る遺伝子なの? と一瞬考えてしまいますが、調べるとわかります。これが至極まっとうな思考の変遷であることが。ノウダラケ遺伝子は、『nou-darake遺伝子』という、分子生物学におけるれっきとした専門用語です。外国の研究者も「ノウダラケ」と言っています。そしてこの遺伝子、“その働きを抑制すると、必要な箇所(要は頭)以外でも神経系を発達させてしまう”、つまり脳を作ってしまうことからノウダラケ遺伝子と名付けられました。そう、ノウダラケというワードから連想された一連の思考はまったく間違っていませんでした。
しかしこのノウダラケ遺伝子、一体全体どこのどいつが保有している遺伝子なのでしょうか? そしてそいつは、この遺伝子を保有しているだけに“脳だらけ”なんでしょうか?ノウダラケ遺伝子を保有している生物……それが『プラナリア』です。そう、体を切っても切っても再生するアイツです。知らない方にちょこっと説明すると、川の上流など、湿度高めの場所(陸上)に生息する、繊毛をもった体長1〜2センチメートルほどの、ぬめぬめっとした生物です。マンガっぽい目をしていて、見た目なかなか可愛いヤツです。ちなみに、プラナリアとは“ウズムシ亜目”に属する動物の総称で、固有の生物ではありません。
このプラナリア、とにかく再生能力が高く、切っても切っても再生します。1匹のプラナリアを“①頭部”、“②胴体”、“③しっぽ”、と3等分すると、なんと3匹のプラナリアとして再生します。①からは胴体としっぽが、②からは頭部としっぽが、そして③からは頭部と胴体がそれぞれ再生するのです。ちょん切られたとしても、どこでちょん切られたかがわかっているような振る舞いですね……。体のどこかで、“俺はプラナリアのどこの部分だ!”とか記録しているんでしょうか……。
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