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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第15回

資金調達のハードルは高そうだ:

仮想通貨の規制進む「ICO」も厳しく

2019年03月25日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 仮想通貨に関連する規制が盛り込まれている資金決済法が改正される。2019年3月15日に資金決済法の改正案が閣議決定された。2020年6月までの改正法施行を目指すという。

 2018年1月に起きたコインチェックの仮想通貨流出事件を受けて、金融庁が有識者の研究会を設置し、規制のあり方などを検討してきた。

 「仮想通貨」の呼び方を、法律のうえでは「暗号資産」に変更し、交換所にハッキング対策の強化を義務づけることなどが柱だ。

 関係者の間で注目度が高かったのは、仮想通貨で資金を集めるICO(Initial Coin Offering)の法的な位置づけの明確化だが、改正案を見る限り、ICO実施のハードルは高そうだ。

●呼び名を「暗号通貨」に変更

 今回の改正案ではまず、法律上の仮想通貨の呼び名を暗号資産に変える。

 改正案の条文を見ると、取引所や販売所を営む仮想通貨交換業者も「暗号資産交換業者」に変更されている。

 通貨としての機能があると消費者に誤認させる恐れがあるといった理由から呼び名の変更が浮上したが、ややこしいのは企業などが仮想通貨や暗号通貨の呼称を使ったとしても問題はなさそうだという点だ。

 当面は「仮想通貨」と「暗号資産」の呼び名が混在する傾向が生じそうだ。注目すべきは自主規制団体である「日本仮想通貨交換業協会」が法改正時に現行の団体名を維持するかどうかだろうか。

●ICOは、金融商品取引法で位置づけ

 ICOは「トークン」と呼ばれる暗号資産の一種を発行して、株式市場などを通さずに資金調達ができる手法として注目を集めた。日本でも、2017年後半ごろまで数例の実施例があった。

 ホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書で、プロジェクトが作る製品やサービスを示し、資金を集める。事業が計画通りに順調に進ちょくすれば、トークンの価値が上がり、うまく行かなければトークンの価値が下がる。

 しかしアメリカを中心に、資金を集めたままプロジェクトが一向に進まない事例や、関係者が行方不明になる事例が相次いだ。

 このため2018年以降は金融庁が監視を強化したこともあって、国内では事実上ICOが実施できない状況となっている。

 今回の法改正ではICOを金融商品取引法で位置づけた。改正法で想定されているのは主に次のようなケースと考えられる。

1. アプリ開発などのプロジェクトがトークンを発行して資金を調達
2. プロジェクト側はトークン購入者から、暗号資産や法定通貨を受け取る
3. トークンを保有する人たちに対して、プロジェクトが得た収益の一部を分配

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