サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第13回
サッカーとテクノロジーの関係は進化し続ける
ワールドカップ2026、テクノロジーは何を残したか 軌跡を振り返る
2026年07月29日 10時00分更新
FIFA AI Proがもたらした「データ分析の民主化」の影響は?
今回、筆者が最も注目していたのが「FIFA AI Pro」だ(関連記事:「クロスの定義とは?」 AIに“サッカー言語”を教えることから始まった、FIFAとLenovoの協業)。
FIFA AI Proは、膨大なサッカーのデータを学習したサッカー専用モデルを搭載したAIツールであり、すべてのチームに提供された。Lenovoによると、今大会を通じて全48チームのユーザー300名超が、16言語で利用したという。つまり、決勝トーナメント前に敗退したチームから優勝したスペインチームまで、すべてのチームが何らかのかたちでこのAIツールを使ったということになる。
もちろん、チーム独自のツールを併用したケースもあるだろう。それでも、これまでは一部の資金力のあるチームしか持ち得なかったデータや分析能力を、出場するすべてのチームが手にしたという点は1つの成果だろう。
どれだけの影響を与えたのかは知るよしもないが、今大会で相次いだ“番狂わせ”にAI Proが絡んでいる可能性も否定できない(関連記事:番狂わせ続きのサッカーW杯、その背景に“AI参謀”あり? すべての参加チームが使う「FIFA AI Pro」とは)。ワールドカップ初出場のカーボベルデは、初戦でスペインに引き分け、決勝リーグのアルゼンチン戦でも延長戦まで追い詰めた。同じく初出場のキュラソーもエクアドルと引き分け、コンゴ民主共和国はコロンビアとポルトガルの両方から勝ち点を奪った。イングランドはガーナと引き分け、4度の優勝経験を持つドイツはパラグアイに敗れて姿を消した。
サッカーとテクノロジーの関係はまだ“道半ば”、戦いは次のピッチへ
FIFA審判委員会 会長のピエルルイジ・コッリーナ氏は、マイアミでの取材で次のように明かした。「審判をどう支援するか、審判に何を提供できるかを考えていたのは、2014年のことだ」。当時は、ここまでテクノロジーがワールドカップを支えることになるとは想像もしなかったと振り返る。
それでは今後、テクノロジーがさらに鍛えられて、人間の審判が存在しなくなることがあるのか。コッリーナ氏は「それは現実的ではない」と語る。あくまでもテクノロジーは人間を支えるものであり、置き換えるものではない――。それが、この12年間、考え続けてきた到達点のようだった。
本連載では審判だけでなく、選手/チーム、ファン、運営などを支えるテクノロジーを見てきた。12年前の過去から見れば大きな進歩だろうが、いずれもまだ「道半ば」であるとも感じる。
例えばファン体験。筆者は、マイアミ・スタジアムでの観戦中、試合が中断するとなぜ止まったのか、何が起こっているのかが分からないという事態に遭遇した。こんなときに、現地でも解説があればいいのになあと思った。そんな仕組みがあれば、スタジアムに足を運んで観戦したいというファンのすそ野が広がるかもしれない。
LenovoとFIFAの協業の舞台は来年、ブラジルで開催されるFIFA女子ワールドカップ2027に移る。きっと、さらにパワーアップしたテクノロジーが、大会とファンの熱狂を支えることになるだろう。
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