製品側の表示は正しいのに、eMarkerの設定が怪しくて
テスター側が過大評価するという展開に
次に、少し前に購入した「240W/USB2.0(480Mbps)」と書かれた黒い太ケーブルを測定した瞬間、混沌の沼と化した。TREEDIXに接続すると、いくら裏返してもプラグを入れ替えても「Please Connect TypeC Cable」と冷たくあしらわれ、eMarkerの存在自体を完全無視してしまったのだ。
一方でPOWER-Zに繋ぐと、今度は過大評価の嵐である。50V/5Aの240W対応は正しいのだが、速度の項目に「TBT4 40Gbps」と身の丈に合わない超ハイスペックな大嘘を表示した。理由は内蔵された格安汎用チップ「Injoinic IP2133」の初期設定データだ。
製造元がUSB 2.0用にデータを書き換えずに組み込んだため、高級テスターにはホラを吹き、せっかちな格安テスターには応答速度のズレから未接続扱いされるという珍現象が起きたようだ。しかし、被膜には正直に「USB2.0」と印字されており、製品自体は嘘を吐いていないのが最高にシュールである。
すっかり楽しくなってしまった筆者は、過去に買って納得が行かなかったギミック付きの「なんちゃって多機能USBケーブル」2本も引きずり出してきた。案の定、これらも2台のテスターでまったく異なる数値を示し、カオスの極みを見せてくれた。
片方の液晶ギミック付きケーブルは、TREEDIXでは「No Emarker chip detected」と非情に通告されたにもかかわらず、POWER-Zでは「Samsung製チップ内蔵のUSB2.0 only」と履歴書を丸裸にされた。もう一方の折りたたみ式スタンド付きケーブルも、TREEDIXは沈黙したままだが、POWER-Z側では240W EPR対応のeMarkerデータがしっかりと読み取れている。
この無限ループはまだまだ続きそうだ
魅力的な外観の高スペックケーブルが増えれば、それを追いかけるようにテスターも進化し、新しい買い物を要求される。これは規格が生み出した終わりなき無限ループだ。もしあなたが不毛な混乱を避けたければ、国内大手が企画・販売している保証付きのUSBケーブルを選ぶべきで、使う人のいない240W対応なんてたわ言は気にせず60W~100W対応の商品で十分だ。
しかし、筆者のように秋葉原の路地裏や中華ECの深淵で、妖しい変態ケーブルを衝動買いして悦に浸るタイプなら、テスターは一時的な精神安定剤になってくれる。
もっとも、頼まれてもないのにテスターという「パンドラの箱」を開けたせいで、健かに動くケーブルの嘘やテスターの相性問題という泥沼に引きずり込まれるのだが。そこまで含めて愛せる同志諸君には、今夜も高級テスターガチャのスリリングな夜空が待っているはずだ。

今回の衝動買い
・アイテム:USBテスター POWER-Z/TREEDIX
・購入:Amazon.co.jp
・価格:1万3000~1万7000円/6990~9500円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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