このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第125回

【JSTnews9月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ACT-X 研究領域「トランススケールな理解で切り拓く革新的マテリアル」/研究課題「トポケミカル電解法による熱非平衡金属間化合物の創製」

二酸化炭素を資源に変える新触媒、新しい合金を電気で合成

2026年09月25日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2種類以上の金属元素が一定の組成比で規則正しく配列した金属間化合物は、触媒や電子材料など幅広い分野で使われています。特に、熱力学的に安定な状態にない「準安定相」の金属間化合物は、特異な電子状態や反応特性を示す可能性があることから、新しい機能材料として注目されています。しかし、準安定相の物質は安定した状態へと容易に変化するため、一般的には合成は困難です。

 東京都立大学大学院理学研究科の吉川聡一助教らの研究チームは、電気化学反応を利用することで、準安定相にある銅(Cu)-インジウム(In)の金属間化合物CuIn₂を、ナノ粒子として合成することに成功しました。研究チームは、CuとInを原子レベルで均一に含む複合金属酸化物(Cu₂In₂O₅)に着目。Cu₂In₂O₅を電極触媒として用いて電気化学反応によって還元し、還元前後の試料についてX線回折測定や電子顕微鏡観察をしたところ、熱力学的に安定な金属間化合物Cu₂Inだけでなく、準安定な金属間化合物CuIn₂が形成されていることを見いだしました。さらに、得られた粒子の二酸化炭素(CO₂)還元性能を評価したところ、水素(H₂)発生の反応が大きく抑制され、一酸化炭素(CO)と、フォルメート(HCOO-)を生成することがわかりました。

 この成果は、これまでになかった組成や構造を持つ金属間化合物を電気化学反応によって作る道筋を示すものです。また、今回得られたCuIn₂が、CO₂を資源に変える新たな触媒として有望となる可能性もあります。

Cu₂In₂O₅の電気化学還元反応により、安定相の金属間化合物であるCu₂Inと準安定相のCuIn₂を合成した(上)。下は得られたナノ粒子の電子顕微鏡画像。粒子表面にCuIn₂が形成され、内部にCu₂Inが存在する。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    量子力学に強く惹かれ、量子ビットの高性能化に一貫して取り組む

  2. 2位

    TECH

    ホワイトハッカーの卵たちが“OTセキュリティ”を通して育む、これからのセキュリティ意識

  3. 3位

    ITトピック

    AI時代の高スキルIT技術者“争奪戦”/AIの成果創出に進む日本企業、障壁は/7割の企業で「AIの不具合」、安全性や財務の影響実態、ほか

  4. 4位

    ソフトウェア・仮想化

    VMwareはセキュリティを提供する企業 Broadcom買収から3年後の現在地

  5. 5位

    デジタル

    ヤマハ、Wi-Fi 7対応「WLX333/WLX232」に運用支援機能 「Wi-Fi快適度」を可視化

  6. 6位

    sponsored

    「運用負荷を下げなければ、セキュリティは高まらない」 企業が直面するネットワーク運用の難題にどう向き合うか

  7. 7位

    TECH

    【12/3・無料懇親会】情シスの皆さん、ASCIIで忘年会しませんか? 今年のセキュリティの“ヤバかった話ビッグ5”と、クリスマスグルメで一年を締めくくろう!

  8. 8位

    sponsored

    正規ソフトウェアに隠されたSectopRAT(トロイの木馬)亜種で被害者のコンピュータをリモート制御する手口

  9. 9位

    ビジネス

    Word・Excel・PowerPointをAIで直接編集 「Safe AI Gateway」にOfficeアドイン機能追加

  10. 10位

    デジタル

    「前例をなぞって楽をしていた」―― 滋賀県のkintone活用を好転させた“失敗起点のフレームワーク”

集計期間:
2026年10月30日~2026年11月05日
  • 角川アスキー総合研究所