レースカーは走る実験室! マツダとIIJが富士で見せた「未来のクルマと通信」の全貌
IIJが考えるサーキットにおける通信の課題
サーキットではさまざまな電波が飛んでいます。通信事業者のIIJ(インターネットイニシアティブ)が、今回プレスルームで行なっていた実験は、モニター画面の遅延を限りなく少なくすることでした。
レース開催時のサーキットは、毎回数万人規模の観客が集まるほか、チーム(エントラント)による走行車両データの伝送や、メディアによる大容量の写真・動画アップロードなどで通信需要が急増します。しかし、レースがない日は通信量が大幅に減るため、ピーク時に合わせた高性能な通信設備を各サーキットが常設することは、大きなコスト負担となっていました。
IIJグループはこうした課題を解決するため、昨年からサーキットに特化したネットワークの実証実験に取り組んでいるのです。
ローカル5Gを活用した超高速通信の検証
2025年9月、IIJグループは富士スピードウェイにて、日本レースプロモーション(JRP)の協力のもと、スーパーフォーミュラの大会中にローカル5Gネットワークの通信検証を実施しました。この実証実験では、フォーミュラカー(SF23開発車両)に専用の通信端末を搭載し、最大290km/hという極めて過酷な環境下で検証が行なわれました。
結果として、高速走行する車両からのオンボード映像やテレメトリー情報(マシン情報)を低遅延で伝送することに成功し、270km/h走行時の基地局切り替え(ハンドオーバー)時にも通信が途切れないことが確認されました。IIJグループはネットワーク設計や基地局工事などを担い、この実証で得た知見をもとに、導入コストを抑えた「サーキット向けローカル5Gソリューション」の提供を開始しています。
大容量データ通信に対応した「共用ネットワーク」実証
今回は大容量データ通信に対応したネットワークの新たな実証実験を行ないました。この取り組みは、日本自動車会議所モータースポーツ委員会や国内主要サーキットが連携した、業界全体のインフラ最適化プロジェクトの一環です。
本実証ではウーブン・バイ・トヨタ(トヨタのモビリティ技術開発を担う子会社)が保有するネットワークを一時的に活用し、主に以下の3点を検証しました。
●チーム向け:オンボード映像や走行データの安定した大容量伝送による、戦略判断や安全性向上の支援。
●メディア向け:混雑時でも写真や動画のアップロード、記事更新がスムーズに行える通信品質の改善。
●低遅延動画配信:通信網内に配信サーバを設置し、外部回線を経由せずにサーキット内の映像をリアルタイム配信する仕組みの構築。
今後の展望と業界への貢献
今回の実証結果を踏まえ、今後はチームやメディアだけでなく、来場するお客様や運営スタッフを含む、すべての利用者が快適に使える通信環境への拡大が検討されています。この実験は筆者も多くのメリットが実感できました。プレスルームのWi-Fiが非常に快適で、ファイルのダウンロードも早くなって、かなり仕事の効率化ができました。通常、大勢の記者がWi-Fiを使うので、途切れたり、遅くなったりしてしまうのです。
また将来的には、複数のサーキットが広域ネットワークを共用する仕組みを作ることで、個別の設備投資コストを抑えながら、モータースポーツ業界全体のデジタル基盤を強化することを目指しているようです。
このように、サーキットはただレースをするだけでなく、社会を変えるテストも行なわれているのです。サーキット発のテクノロジーで、暮らしが快適になる日は近そうです。
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