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エンジニアの情熱を再燃させる「Tech Challenge Party 2026」レポート 第8回

AI時代にこそ必要 これからのエンジニアに必要なのは「視点力」

「世界一地味なデモ」が魅せた圧倒的な性能 超高速タイムスタンプエンジン開発の舞台裏

2026年05月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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電帳法はなぜリスクを許容する構造になっているのか?

 さて、ダークAIによる巧妙な偽造が可能になってきた現在、電子取引を安全にするために注目されるようになったのが、前述したタイムスタンプだ。実際、2022年の電帳法(電子帳簿取引法)改正では、第三者の偽造を防ぐために取引で利用するPDFにタイムスタンプを付けることになった。

 しかし、今回の電帳法改正ではリスクを許容する要件にとどまっている。島澤氏は、「今の電帳法は不思議なルールになっています。送り手は生のPDFを相手に送り、受け手側が2ヶ月と7日以内にタイムスタンプを押して、保管すればOKなんです」と指摘する。当然、改ざんしたあとにタイムスタンプを押すことも全然できてしまい、条件を満たせば署名の付与も不要だという。

デジタルデータのやりとりにおける課題

 本来は送付側が書類作成時にタイムスタンプと署名が付与し、セキュアな状態で流通させることが求められる。では、なぜリスクを許容する構造になっているのか? 島澤氏は「シンプルにいえば、タイムスタンプの付与が遅いから」と指摘する。「送る側がまとめてタイムスタンプを付与する方法だと、仮に100万枚付与したら、最後の1枚をタイムスタンプを押すのは数ヶ月先になってしまうんです」(島澤氏)。

 この課題に立ち向かったのが、前述したTrustee。「だとしたら、これはエンジニアとして矜恃の見せ所ですよ」(島澤氏)と島澤氏の鼻息も荒い。長らく帳票サービスを手がけてきたウイングアーク1stはPDFに関する知見もあったため、今回はリアルタイムに近い速度でタイムスタンプを付与するエンジンを構築することにしたという。

「日影の技術」にこそチャンスがある

 こうして生まれたTrusteeのタイムスタンプエンジンは、「既存のタイムスタンプサービスに比べて、平気で数万倍速いというレベル」(島澤氏)に仕上がっているという。既存のサービスが1秒で1枚のPDFにタイムスタンプを付与するレベルだったのに対して、Trusteeエンジンは1秒で数千枚のレベル、タイムスタンプを付与できる。

 実際のパフォーマンスは「世界一地味」というコマンドラインのデモで比較された。今までのエンジンは、仮想マシンの起動からタイムスタンプの付与までおおむね17秒程度かかっていた。これに対して、Trusteeのタイムスタンプエンジンは14秒で10万ファイルの処理が実現している。「まったく世界観が違う。私たちは高速処理や高可用性を求め、自分たちで作っているので低コストも実現できている。タイムスタンプの市場でもっとお客さまが使いやすいものにしようとしている」と島澤氏は語る。

「世界一地味」を謳うTrusteeタイムスタンプのデモ

 今回のタイムスタンプエンジンの開発を通じて、島澤氏は「エンジニアの視点、ものづくりでなにを重視すべきか、徹底的に考えさせられた」という。

 一昔前は、ブロックチェーン、ディープラーニング、Web3、RAGなどの技術が流行し、今はご存じ生成AIが花盛りだ。こうした「陽の技術」は放っておいても多くのエンジニアが関心を持ち、製品への組み込みを模索する。その一方で、CPUの利用効率、パイプラインの充填率、ネットワークの効率化など地味な「陰の技術」を意識するエンジニアは少ない。しかし、こちらの方が普遍的であり、重点を置いた方がビジネス的にも目立つという。「チャンスは陰の技術の方にあるのでは?」と島澤氏は語る。

エンジニアの差別化につながるチャンスは陰の技術にあるのでは?

 すでに多くの会社がAIの製品化や販売に注力しているが、逆に言えば競争は激しく、販売も難しい。「エンジニアのみなさんは、自分たちの技術はどう差別化すればいいのか悩んだりしませんか? 私は陰の技術とも言えるエンジニアの基礎技術を追求する方が市場価値が高くなると思う」と持論を語る。

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