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「IOWNの語りべ」が披露した最新動向と2030年までのロードマップ

世界をひっくり返せるかもしれない日本発の「IOWN」 光化がICT基盤を抜本的に変革

2026年03月19日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 ソフトウェア協会は、2026年2月、エンジニアの好奇心・探究心を再燃させるイベント「Tech Challenge Party」を開催。ビジネスとテクノロジーの接点を深掘りするビジネストラックでは、NTTドコモビジネスの林雅之氏が「世界をひっくり返せるかもしれない日本の技術「IOWN」の可能性」のタイトルで、今注目を集めるIOWNの最新動向を解説した。

NTTドコモビジネスのイノベーションセンター IOWN推進室 エバンジェリスト 林 雅之氏

AIで急増する電力消費 ICT基盤はもはや処理能力も限界に

 登壇した林 雅之氏は、NTTコミュニケーションズのクラウドエバンジェリストとして長らく情報発信を手がけており、6700日連続でブログを掲出してきた。現在は、昨年NTTコミュニケーションズとNTTドコモの法人事業が統合して誕生したNTTドコモビジネスのイノベーションセンター IOWN推進室 エバンジェリストとして未来の技術を提案している。今回のテーマはNTTグループが次世代インフラの基盤技術として注力している「IOWN(アイオン)」の基本技術と最新動向だ。

 AIの利用が加速度的に爆発している昨今、NTTが手がけているICT基盤は大きな岐路に立たされている。データ量とともに、電力消費は急増中。「日本のデータセンターの年間消費電力は2024年から2028年の4年で約3.2に増大する見込み」(林氏)とのことで、既存のICT基盤では伝送能力(ネットワーティング)の観点でも、処理能力(コンピューティング)の観点でも限界を迎えることになる。

 この課題に向けたICT基盤における技術革新がIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)になる。IOWNをシンプルに説明すれば、ネットワークから端末までの伝送を電気から光に切り替えることで、環境負荷を抑えながら、インフラを高度化するというネットワーク構想だ。ここでキーになるのが、これまで電気で行なっていた処理を光化するための「光電融合デバイス」(後述)だ。

 距離が伸びると処理量が増える電気配線に対して、光配線は距離に影響を受けにくい。この光配線をベースにした次世代情報基盤がIOWN。すべてを光化したAPN(All Photonics Network)と光電融合技術の「IOWNコンピューティング」を用いて、実世界とサイバー空間を掛け合わせたデジタルツインを実現。各レイヤーを「コグニティブファウンデーション」と呼ばれるオーケストレーターで管理するというのが全体像だ。

IOWN構想の全体像

NVIDIAやグーグルも参加 グローバルスタンダードを目指すIOWN Global Forum

 IOWNは未来の技術ではなく、基盤となる光ネットワークである「IOWN APN(All-Photonics Network)」は、昨年からすでに商用サービスがスタートしている。IOWN APNでは、すべての区間で光波長を占有することで「大容量」「低遅延」「低消費電力」を実現する。

 IOWN APNと既存の光ファイバー通信はどこが違うのか? 既存の光ファイバー通信は、データセンターでの処理が電気であるため、光と電気の変換プロセスが必ず挟まってくる。これらをすべて光伝送で行ない、変換プロセスで生じるロスを削減できるのが、IOWN APNのポイントとなる。

 また、IOWNのユニークなポイントは、NTT固有の技術ではなく、グローバルでの業界スタンダードを目指している点だ。2020年1月にNTT、インテル、ソニーで立ち上げられた「IOWN Global Forum」では技術やフレームワーク、インターフェイスの開発や標準化にとどまらず、ユースケースやアプリケーションの開拓も進めているという。

 3社でスタートしたIOWN Global Forumだが、2025年12月時点ではアジアや欧米を含む178の企業と団体が参画している。この中にはNVIDIA、グーグル、マイクロソフトなどの大手IT企業、KDDIのような通信事業者、製造業、金融機関、SIer、コンサルティング、大学、研究機関なども参画している。講演タイトルである「世界をひっくり返せるかもしれない日本の技術」は間違っていないわけだ。

グローバルで活動するIOWN Global Forum

地理的に離れたCPU、メモリ、ストレージが分散処理するIOWNの世界感

 続いて林氏は、IOWNのロードマップを披露した。現行のIOWN 1.0はデータセンター間のネットワークの光化を実現しているが、2026年に実用化される見込みのIOWN 2.0ではボード間、2028年に実用化を目指すIOWN 3.0ではチップ間、最終形態のIOWN 4.0では半導体のダイ間の光化を目指す。「IOWN 2.0で目指すボード間の光化は、NVIDIA、TSMC、Broadcomなども目指しているので、競争が激化する領域」と林氏は指摘する。

 現在、急ピッチで開発が進められているのが、前述した光電融合デバイス。昨年開催された大阪関西万博では、16個の光トランシーバーをASICに接続した光電融合スイッチ。このスイッチでは51.2Tbpsの伝送容量を実現していたが、半年後に発表されたNTT R&Dフォーラムではより小型化され、伝送容量も倍の102.4Tbpsに増量している。光電融合デバイスも着実に進化を遂げている。

光電融合スイッチも着実に進化を遂げている

 光電融合技術は既存のコンピューティングを大きく変革する。「これまでのコンピューターはCPUやメモリが固定されている。光コンピューターはCPUやメモリがそれぞれ独立して、オプティカルインターコネクトでつながる。これまでの固定概念を超え、リソースを最適化できるコンピューティング基盤を実現する。ネットワークだけではなく、データセンターも光化していくのがIOWN」と林氏は語る。

 光が実現する遅延のない高速ネットワークを用い、コンピューターを構成する要素が光のインターコネクトでつながると、もはやロケーションを問わなくなる。「たとえば、北海道にGPU、東京にCPU、九州にストレージを配置して、分散型の処理が可能になる」と林氏は語る。

ラックに置ける光量子コンピューターがAPNでつながる2030年

 林氏は、最新の取り組みとして2028年の商用化を目指す次世代APN「APN step3」について紹介した。今までポイントツーポイントの接続だったAPNに対して、APN step3ではAPNコントローラーやオーケストレーターを連携させることで、光波長パスを動的に変更し、接続対地を柔軟に切り替えることが可能になる。これらは政府が国策として進めるデータセンターの地域分散やワットビット連携と言われる電力と通信の連携などとも歩調を合わせていくという。

 さらに林氏は、IOWN 4.0の先にある光量子コンピューターの取り組みについても紹介した。大型になりがちで、冷却にも難を抱える量子コンピューターだが、光量子コンピューターは常温・常圧で動作できるほか、波長多重も可能なため、小型化が見込めるという。また、光の周波数で動作し、電気回路も最小限にできることから、圧倒的なスケーラビリティを実現できるという。

IOWN 4.0の先にある光量子コンピューティング

 こうした光+量子の実現に向け、昨年NTTは東京大学発のベンチャーであるOptQCとの連携協定を発表。2027年に国内トップレベルの1万量子ビット、2030年に世界トップレベルの100万量子ビットを実現するという。「将来的にはデータセンターのラックに光量子コンピューターを設置できるようになる。こうしたデータセンターをAPNで結び、世界規模での安全な量子コンピューティングを目指す」と林氏は語る。

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