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「Tech Challenge Party」で語られたAIキャラクターの課題と未来

AI人格に“老い”や“葛藤”を宿す実装論 それっぽく話すチャットボットから脱却するために

2026年03月18日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 性格や口調などが設計された「AIキャラクター」と対話できるサービスが、エンタメ領域を中心に広がっている。自ら視聴者と交流をする「AITuber」も盛り上がりをみせる一方で、依然として壁となっているのが“AIっぽさ”の払拭である。

 ソフトウェア協会は、2026年2月、エンジニアの好奇心・探究心を再燃させるイベント「Tech Challenge Party」を開催。「AIキャラクター人格の実装論」と題したセッションでは、AIキャラクターの現状や限界、AI人格に思想や行動を創発させる手法について解説された。

 登壇したのは、AITuberの開発や普及に取り組むsaldra(サルドラ)さんだ。

saldraさん

「それっぽく話す」から「思想にもとづき話す」フェーズへ

 最初に語られたのはAIキャラクターの現状だ。

 現在、誰もがキャラクター性を与えるための教師データを作成でき、ファインチューニングによって独自のAIキャラクターを生み出せる環境が整っている。一方で、saldraさんは、「表面的なセリフの学習では想定外の事態に弱く、『AIっぽいね』で終わってしまうことが多い」と指摘する。

 例えば、「○○でつらい」と打ち明けられた際に、AIは学習した口調で「元気を出して」と返すことはできる。しかし、人は単に「つらい」というセリフに反応しているわけではない。

 相手が落ち込んでいる状況を察し、共感するからこそ「元気を出して」と声をかける。あるいは、詳細を聞いて欲しそうな気配を感じれば「何があったの」と深掘りするなど、状況に合った発言をする。

 「AIキャラクターは“設定通りに話す”だけで、思考をしていないのが現状。これは、質問・回答ベースで学習させるファインチューニングの限界」(saldraさん)

 それでは、これからのAIキャラクターには何が求められるのか。saldraさんが強調したのは、思想を生成した上でそれに基づき発言や行動、内省をさせるアプローチだ。「こうした『多段階の推論』を設計することで、発言のみのAIキャラクターの時代を終わらせられる」という。

 加えて、この思想は固定化されず、変化し続ける必要がある。先の例で言えば「何があったの」という問いかけに「話したくない」と拒絶されたら、別の接し方を模索しなければならない。

 人が経験を通じて価値観を変えるよう、生成する思想を動的に変化させることで、想定外の事態に弱い「着ぐるみ」のようなチャットボットから脱却できる。

これからのAIキャラクター

AI人格に“当事者意識”や“老い”を宿す人格エンジン

 こうした課題がある中で、saldraさんが開発したのが、経験から学び、老いまでを再現する「人格エンジン」だ。

 開発の出発点となったのは、AIに疑似的な当事者性を芽生えさせることだったという。人は身体を持っているからこそ、自身や身の回りで起きたことを経験に変え、現実的な思想を形成していく。一方で、「AIは身体を持っていないからこそ当事者性がなく、理想論に陥りやすいという問題意識があった」とsaldraさん。

 実際にAIに身体(ロボット)を持たせるというアプローチもあるが、saldraさんがとったのは、「テキストの世界に人格を入れる」という手法だ。あたかも当事者のような経験を学習させ、それを積み重ねることで、理想論的な思想から脱却させる。

 具体的にはLLMへの指示を分析フェーズ、没入フェーズの2段階に分け、前者ではテキストを客観的に読ませた上で、感想を言語化させる。没入フェーズでは、下記のようなプロンプトにより、傍観者から当事者に視点を変えさせ、心の揺れを出力させる。

“あなたはこれからこのテキストの世界に実際に入ることになりました。そこで見た情景を主観的に、思ったことを詳細に記述してください”

経験学習のためのプロンプト設計

 こうした設計で、AIに主観的な思想を持たせられた。一方で今度は、テキストを学習するたびに、毎回思想が塗り替えられてしまうという問題に直面する。「桃太郎を読ませた後に、鬼の視点で描かれた物語を読ませると『鬼を大切しよう』と手のひらを返してしまう」(saldraさん)

 そこで導入したのが「老い」の概念だ。学習したテキストの量を年齢とし、年を重ねるほど思想が硬直化されるよう、「可塑性」のパラメータを設計。若年期の状態では、どんな経験でも素直に受け入れるが、成熟期では新しい価値観を取り入れにくくなり、老年期では既存の価値観を補強するだけになる。

可塑性のパラメータで老いを実装

 さらに、衝撃的な経験をして人生観が変わり、突如発想が柔軟になるという人特有の体験も再現している。一定の閾値を超える衝撃を経験をすると、可塑性を巻き戻して「若返る」仕組みを導入した。

 このように、経験を通じて思想を変え、頑固になっていく一方で、ある日突然若返るという人格の変遷を形成した。こうして育成された「偏った人格」は、独自の思想を展開するだけではなく、その思想の理由まで体験したテキストのログで説明可能になる。saldraさんは、「生命っぽいものが見え始めてきた」と語る。

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