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ソフトウェア協会主催の「Tech Challenge Party」基調講演レポート

OpenAI長崎氏・サイボウズ青野氏・さくら田中氏による“AI時代のエンジニア”へのエール 「技術の変化を楽しんで」

2026年02月16日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 IT健保の母体としても知られるソフトウェア協会(SAJ)は、2026年2月4日、エンジニアのためのコミュニティイベント「Tech Challenge Party 2026」を開催。本イベントの基調講演では、同団体会長でさくらインターネット社長の田中邦裕氏をモデレーターに、サイボウズ社長の青野慶久氏(SAJ・筆頭副会長)とOpenAI Japan社長の長﨑忠雄氏によるトークセッションが繰り広げられた。

(左から)さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏、サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏、OpenAI Japan 代表執行役社長 長﨑忠雄氏

 SAJは、ソフトウェア製品に関わる企業の集まった一般社団法人であり、「ソフトウェア産業をより良くしていくこと」を目的に活動を続けている。2025年には設立40数年を迎え、会員社数は700社を突破している。

 今回のTech Challenge Partyは、ソフトウェア業界を支えるエンジニアが共に高め合うこと目的に初開催された。基調講演では、AWSジャパンを約12年にわたりけん引し、クラウドによりエンジニアのパラダイムを変えた長崎氏を迎え、生成AI時代におけるエンジニアやプロダクトのあり方について語られた。

“かつてのクラウド以上”に社会を変える生成AI

さくらインターネット 田中氏(以下、田中氏):さっそくですが、日本における生成AIの動向やユースケースについて聞かせてください。

OpenAI Japan 長﨑氏(以下長﨑氏):2024年と2025年の決定的な違いは、企業の生成AI活用がPoCから本番稼働に移行したことです。AIシステムがエージェント化して、LLMが持つ膨大な情報と企業内の秘匿情報がセキュアにつながることで、パラダイムシフトが起きています。

 「AIとの対話ですべての答えを得られる」という体験を実装する日本企業が増えて、アメリカの実装スピードにも追いついてきました。日本のOpenAIの企業向けビジネスが、アメリカに次いで2番目に成長しているのがその証です。

 もうひとつは、ちょうど世に出て1年が経つ「バイブコーディング」です。OpenAIの話をすると、従業員の数が少ない一方で、グローバルで8.5億人のユーザーを抱え、企業ユーザーも100万社からどんどん増えています。

 だからこそ8割ほどの業務をAIで処理する。そして、人は本当に重要なことに集中するという働き方をしています。日々、さまざまなサービスをリリースしているのも、Codex(OpenAIのコーディングエージェント)をほぼ100%利用しているからです。リサーチャーや技術者が寝ている間にエージェントが働き、出社すると出来上がっている。そんな世界が、2025年から現実になっています。

OpenAI Japan 代表執行役社長 長﨑忠雄氏

サイボウズ 青野氏(青野氏):われわれの顧客でいうと、「RAGが定着した」という感覚があります。コンシェルジュ的なものを作って、営業が類似した提案や案件の進捗をたずねる、社員が社内規則や産休の取り方を教えてもらうといった形で、ローカルに閉じたRAGの世界が広がりました。

 後は、kintone(サイボウズのノーコード・ローコードツール)のCMで豊川悦司さんがシュシュッとアプリを作っていますが、生成AIにアプリの作成や修正をお願いするという「シュシュッとすらしない世界」が始まっていますね。

田中氏:シュッシュとしないとパートナーさんの仕事がなくなりませんか。

青野氏:そこなんですよ。新しい技術の登場を受けて人がどう変わっていくかが今日のテーマですね。

田中氏:人でしかできないことが求められる時代になりました。

サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏

長崎氏:クラウドが日本に上陸した十数年前、まったく同じように「インフラエンジニアがいなくなるのでは」という議論がありました。しかし、実際には誰も職を失わず、むしろクラウドによって新しい職種が生まれています。同じことがAIでも確実に起きますし、その変化のスピードはクラウドよりはるかに早いです。

田中氏:12年前に青野さんとクラウドはどうなるのかという対談しましたが、われわれの仕事は残っていますし、エンジニアも3倍、4倍に増えていますね(笑)(参考記事:ネットバブル、受託体質、クラウド……戦い続けた2人の15年

長崎氏:クラウドの何がすごいって、マーケットを広げたことです。生成AIは、クラウドよりもマーケットを広げる可能性があります。

“効率化を超えた変化に”人はついていけるのか

田中氏:生成AIによってエンジニアの課題解決の幅は変わっていますか。

長崎氏:まず、生成AIの普及で、仕事のあり方が劇的に変わりました。繰り返し作業や時間のかかる作業、複数人で同じことをする作業は、AIに任せた方が確実に生産性が高くなります。エンジニアも同じで、コードを書く必要性はなくなっていくでしょう。今後、複数のAIエージェントを管理して、ツールやワークフローを設計できるAIエージェントを使いこなすことで、今まで解決できなかった課題を、より早く、より大きなスケールで解決できるようになります。

 加えて、「ソフトウェアエンジニアリング」中心の世界になると考えています。コードを書くのはあくまで手段であり、価値のあるプロダクトを顧客に届けるのがアウトプットです。生成AIやAIエージェントによってアウトプットが加速することで、問題解決の軸はソフトウェアエンジニアリング、つまり「顧客満足度を高める」方向にシフトしていきます。

田中氏:ちなみに、子どもの頃からコンピューターが好きな私たちは、今後もコードを書くことを許されるのでしょうか。

長崎氏:生成されたものをレビューするには、引き続きコードを書く力が必要になると思います。

田中氏:最初からAIに任せていると、ちゃんとした文章が書けなくなるというのと似ていますね。

さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏

青野氏:僕はもうコーディングをしていないですが、メールでのやり取りでは、生成AIにドラフトを書いてもらって、それを修正しています。何でそれができるかというと、まず自分の伝えたい想いがあって、文章を評価できる力があるからです。今後、漢字を書けなく可能性はありますが、文章が書けなくなるわけではない。高級言語を今のエンジニアが使わなくなったように、コーディングのやり方が変わるだけというイメージです。

長崎氏:生成AIが仕事をうばうと言われていますが、逆の発想を持つべきです。一人でできることの幅が飛躍的に広がって、アウトプットは10倍以上になります。先日、OpenAIに入社したエンジニアがくたくたになっていました。アウトプットが増える分、これまでとはまったく違う働き方をしなければならないからです。アドレナリンが出っ放しですよ。ただ、本来集中すべきことに集中できる分、望む結果にも早くたどり着けます。

田中氏:例えば、1週間かけていたのが1時間で終わるようになると、できることが一気に増えてしまう。効率化するどころではない変化に、人はついていけるのかという話もありますね。

青野氏:後は、これまで仕事を生んできた課題を持っている人が、AIで何でもできるようになると、課題を与えられてきた人に仕事が回ってこなくなる。だからこそ、自ら課題を見つけに行く、あるいは、何かを解決したいという想いを持つことが大事なのかなと。

長崎氏:それがまさに、日本企業が生成AIでトランスフォーメーションできるかの鍵だと思っています。生成AIはテクノロジーではなく、「チェンジマネジメント」です。AIで生れた時間をどう活用するかを設計しなければならない。だからこそ、リーダーシップであったり、エンパワーメントがこれまで以上に重要になります。

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