エンジニアの情熱を再燃させる「Tech Challenge Party 2026」レポート 第8回
AI時代にこそ必要 これからのエンジニアに必要なのは「視点力」
「世界一地味なデモ」が魅せた圧倒的な性能 超高速タイムスタンプエンジン開発の舞台裏
2026年05月27日 09時00分更新
コマンドラインの黒い画面という世界一地味なデモに映された圧倒的な性能。ソフトウェア協会主催の「Tech Challenge Party」に登壇したウイングアーク1st CTOの島澤甲氏は、従来の数万倍という速度でタイムスタンプを付与できる自社開発エンジン、そしてAI時代にこそ必要なエンジニアの「視点力」について語った。
「ないものを作る」にこだわってきたウイングアーク1stでの開発
2004年に創業されたウイングアーク1stは、企業のデータ活用を支援するプロダクトやサービスを手がけている。帳票・文書管理ソリューションとして「SVF」と「invoiceAgent」、データエンパワーメントソリューションとして「Dr.Sum」と「MotionBoard」などのプロダクトを展開。これらのプロダクトを支える帳票やデータ分析の基盤、AIプラットフォームなどもすべて自社開発している。
ウイングアーク1stがエンジニアリングという観点でこだわっているのは「ないものを作る」ということだという。「日本でデータベースを作っている数少ない会社だったりします。ウイングアーク1stを知らない方は多いかもしれませんが、成果物を触ったことない人はいないと思う。ETCの領収書だったり、宅配便の伝票の後ろには、私たちの製品がある。そんな会社でございます」と島澤氏は語る。
そんな技術志向のウイングアーク1stのCTOである島澤氏の講演テーマは、昨年リリースしたタイムスタンプサービス「Trustee」の技術的なチャレンジだ。「エンジニアリング的な工夫やこれからエンジニアが大切にすべきものについても触れていきたい」と島澤氏は語る。
タイムスタンプは、「電子署名サービスの一種であり、ファイルに対して『その時刻に、そのファイルが存在すること』を証明する技術」だという。電子署名、eシール、モノの正当性、Webサイト認証、eデリバリーなどの技術とともに、電子取引に対する信頼と確信を高める「トラストサービス」という市場を形成している。
タイムスタンプの技術自体は決して新しいものではない。にもかかわらず、ウイングアーク1stがあえてTrusteeを開発した背景には、生成AIによって大きく変わっていく電子取引のニーズに応える必要性があった。「未来の顧客はこういう技術が必要になるだろうと逆算してサービスを始めている。決して新しくないタイムスタンプに新しい価値を提供すべく、自分たちでサービスを開発して、市場に参入した」と島澤氏は語る。
ダークAIの悪用で業務の現場が危ない
ウイングアーク1stでは、生成AIを自社サービスに取り込むにあたり、AIを「ホワイトAI」と「ダークAI」の2種類に大別している。前者のホワイトAIは、ご存じChatGPTやClaude、GeminiなどビッグテックのパブリックAIで業務に利用するために制限が実装されている。こちらには自社専用のプライベートAIも含んでおり、ウイングアーク1stではAI OCRの基盤を提供している。
今回テーマになるのは「なんでもあり」のダークAIだ。「あえて悪さをするために開発されたわけではなく、制限を外してしまったAIと位置づけられる」と島澤氏。こちらは詐欺やクラッキングなどで利用される不正データの生成に利用されたり、商用コンテンツを大量に学習することで、コンテンツ産業を破壊してしまうAIだ。
ホワイトAIとダークAIのどこが違うか。たとえば、「領収書を偽造して」とClaudeに渡すと、「これは不正なので、できません」と答えが返ってくる。これはビッグテックがかなりの投資を行ないAIにガードレール(制限)をかけているからにほかならない。逆に言えば、制限をかけないAI(=ダークAI)はレシートの日付や金額を簡単に偽造できてしまう。「経理に出したら、本当に通りそうだったので、慌てて止めました(笑)」(島澤氏)というくらい、精度も高い。
最近、SNSの投稿や画像を見ていると、「これはAIで作ったのではないか?」と思わせるコンテンツが数多く流布されている。「最近ではAIで作っていないものに、むしろ価値が生まれてきている。このプレゼンも、あえてAIには1バイトも手伝ってもらっていない。なんか価値あるようなものに思えませんか」と島澤氏は私見を語る。
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