Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第9回

【慶應義塾大学准教授・岩尾俊兵氏】老舗企業に眠る500兆円市場を再起動せよ。気鋭の学者が社長として仕掛ける「日本覚醒プラットフォーム」

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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眠れる500兆円市場と「ファンドではない」新しい持ち合い

玉置: 日本の老舗企業全体で見ると、どれくらいの規模になるのでしょうか。

岩尾: 日本には、売上が50億から500億規模の老舗企業が約2万社もあると言われています。間をとって1社100億円だと計算しても、全体で200兆円規模の途方もない市場です。

玉置: それはすごい。

岩尾: ですが、そうした会社の中には、上場していても「安泰」になってしまって成長意欲を失っているところも多い。結果的に株主も国民もみんなが損をしている状態です。だから、ここをみんなで企業価値を上げていこうと。

 具体的な仕組みとしては、未上場企業と上場企業でアプローチを分けています。未上場企業の場合は、我々のグループ会社に入ってもらい、ときにはトライアイズの株式やストックオプション等を持ってもらうことで、上場企業の制度的メリットを享受できるようにします。

玉置: では、すでに上場しているけれども成長が止まっている老舗企業に対しては?

岩尾: 上場企業で、例えばPBR(株価純資産倍率)が1倍を割れているような過小評価されている会社に対しては、私たちが5%前後まで株を買います。そして、うち捨てられている少数株主の「議決権」を委託してもらい、少数株主の意見も代表しながら、会社に対して「もっとこうした方がいいんじゃないですか」と一緒に改善を進めていくのです。

玉置: なるほど。ただ、外から株を買って経営に口を出すと聞くと、世間的には「ファンド」のようなハゲタカ的なイメージを持たれる方もいるかもしれませんね。

岩尾: ええ、「ファンド」と聞くとビクッとする経営者も多いでしょう。でも、私たちはファンドのように「企業を切り売りして儲けて逃げる」わけではありません。

 どちらかというと、昔ながらの「持ち合い」の新しい形です。ただの馴れ合いの持ち合いではなく、お互いの強みと技術を掛け合わせて、一緒に企業価値を上げていく。投資家から見ても、単独では危うい企業同士が強固なネットワークで結ばれることで、一種の安心感が生まれる。そんな仕組みを作ろうとしています。

京都の「若ボン」が家業を継がない理由と、伝統の再定義

玉置: 昔ながらの持ち合いのアップデート、というのは面白いですね。私は京都の大学(同志社大学)を出ているのですが、京都の老舗なんかを見ていると、確かにそういった強固なネットワークや、逆にしがらみのようなものを強く感じます。

 NHK BSのドラマに『京都人の密かな愉しみ』という作品があるのですが、京都の老舗事情はまさにあの世界でして。例えば400年続くお菓子屋さんとか、100年続く呉服屋さんとかの「若ボン(若い跡継ぎ)」たちの中には、家業を継ぎたくないと思っている人も結構いるのです。

 面白いのが、家業を継ぐつもりのある子は、地元で程よい距離感の同志社大学あたりに行って、将来の家業に役立つ人脈を作ったりする。逆に「絶対に家業を継ぎたくない、外に出たい」と思っている子は、必死に勉強して京都大学や東京大学に行こうとするんですよね(笑)。「俺は学問の道に進むから家業は継げない」という大義名分を作るために。

『京都人の密かな愉しみ』のロケ地でもある京都・西陣を歩く筆者

岩尾: ああ、なるほど(笑)。「学問」が家業から逃れるための大義名分になるわけですね。

 おっしゃる通り、伝統があるからこそ、次世代にとってはそれが重荷になってしまうことは多々あります。でも、そうやって優秀な層が「古いしがらみ」を嫌って外に出てしまえば、100年企業はいつか立ち行かなくなります。

 だからこそ、伝統産業をただの「古い家業」として残すのではなく、そこにテクノロジーと経営科学を掛け合わせ、「ワクワクする成長企業」へと再定義する必要があるんです。それができれば、優秀な若者も「この会社なら面白いことができる」と戻ってくる。日本覚醒プラットフォームが目指しているのは、そういう未来なんです。

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