Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第9回
【慶應義塾大学准教授・岩尾俊兵氏】老舗企業に眠る500兆円市場を再起動せよ。気鋭の学者が社長として仕掛ける「日本覚醒プラットフォーム」
「戦略なき会社」から「100年企業を継承するプラットフォーム」へ
玉置: ここからは、岩尾さんがつい最近、3月末に発表された「日本覚醒プラットフォーム」について伺います。そもそも、岩尾さんが社長を務められているこの「トライアイズ」という会社は、どういった事業内容なのでしょうか。HPを拝見しても「濱野皮革工藝」(2025年10月、濱野皮革工藝株式会社を株式会社 UKETUGIへ売却)などの伝統的なブランドから、地質調査などのインフラ関連まで幅広くて、少し理解するのが難しかったのですが。
岩尾: おっしゃる通り、理解しづらいですよね(笑)。最近は「100年企業継承カンパニー」と言い換えて、以前よりは理解されるようになってきました。とはいえ、はっきり言ってしまえば、私が社長になる元々は「お金だけがあって、よくわからない色々な事業をやったけれど、全部失敗した」という状態の会社だったんです。
玉置: なかなか攻めた発言ですね(笑)。
岩尾: ようするに明確な戦略がなかった。経営陣もどうしていいか困り果てていて、そこで私が経営を預かることになったわけです。私は3月26日に社長に就任し、そこから4日後の3月30日に、この会社に新しい戦略を実行するための「日本覚醒プラットフォーム」構想を発表しました。その後は、中長期経営計画などでより具体的なプランを提示しています。
玉置: まさに電光石火のスピードですね。そのプラットフォームとは、一言で言うとどういうものですか?
岩尾: 一言で言えば、「100年企業を継承(承継)していくプラットフォーム」です。100年続いている企業を、次の100年も生きていけるようにする。日本には老舗と呼ばれる企業がたくさんありますが、顧客基盤や技術といった「伝統」を持ちながらも、人手不足や成長性の欠如といった課題を抱え、どうすればいいか分からなくなっています。
100年企業の中には、色々な「しがらみ」や「無駄」があって、真面目に働いているのに報われない人がたくさんいるんです。そこを経営科学と先端情報理工学を用いて劇的に改善し、企業価値を上げていくことが私たちのミッションです。
理系と文系のテクノロジーで「リストラなき成長」を
玉置: その「無駄」をどうやって改善していくのでしょうか?
岩尾: 100年企業が次の100年を生き抜くためには、伝統という基盤に「革新」、つまりテクノロジーを掛け合わせる必要があります。そこで、私が研究してきた文系のテクノロジーである「経営科学」と、理系のテクノロジーである「情報理工学」のシステムを導入するんです。
具体的には、プラットフォームに入ってきた企業の無駄になっている業務を、ITやAI、ロボティクスでどんどん自動化していきます。
玉置: なるほど。ただ、自動化と聞くと、現場の人は「リストラされるんじゃないか」と不安になりませんか?
岩尾: そこが重要なポイントです。私たちはそこでリストラをするのではなく、自動化で浮いた人材を「お客さんとのインターフェース(接点)」や「顧客獲得」の活動に移動させるのです。どうやって顧客を獲得すればいいかというノウハウは、私たちが持っている経営科学の知見で一緒に作っていく。
そうすることで、人が減るのではなく、売上が上がり、成長性が高まっていく。これが私たちのやり方です。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
この連載の記事
- 第8回
地方活性
【文化庁文化政策調査分析官・林保太氏】「発見される日本」はもう卒業だ。街の記憶をアセットに変え、日本を再言語化する「50年スパンの文化駆動OS」 - 第7回
地方活性
【国土交通省・後藤隆昭氏】防災は「共創のOS」である。シン・ゴジラのコミケ本『虚構と防災』が翻訳する、公助の限界を超えた都市のレジリエンス - 第6回
地方活性
Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】 - 第5回
地方活性
【吉見俊哉氏×柳与志夫氏】「知の菌」が発酵する街、神保町。AI時代の身体性を呼び覚ます「都市のリデザイン」 - 第4回
地方活性
【武蔵大学准教授・菊地映輝氏】「エヴァ批評少年から『産学連携の翻訳機』へ——武蔵大・菊地准教授が挑む、フェイクな関係を壊す『セレンディピティの設計』」 - 第3回
地方活性
【株式会社Stroly・高橋真知氏】「手描きなど様々な地図→視点の地図」が人を動かす。位置情報×ナラティブが書き換える、歩行の未来 - 第2回
地方活性
【東京大学大学院・真鍋陸太郎氏】都市は「情報の織物」である。コミュニティ・アーカイビングが書き換える、没場所性を超えるレジリエンス - 第1回
地方活性
【近畿経済産業局・津田哲史氏】「Local X」が書き換える、製造業と街のOS。予定調和のない共創がイノベーションを生む
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
地方活性
【文化庁文化政策調査分析官・林保太氏】「発見される日本」はもう卒業だ。街の記憶をアセットに変え、日本を再言語化する「50年スパンの文化駆動OS」地方活性
Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】地方活性
【吉見俊哉氏×柳与志夫氏】「知の菌」が発酵する街、神保町。AI時代の身体性を呼び覚ます「都市のリデザイン」地方活性
【武蔵大学准教授・菊地映輝氏】「エヴァ批評少年から『産学連携の翻訳機』へ——武蔵大・菊地准教授が挑む、フェイクな関係を壊す『セレンディピティの設計』」地方活性
【近畿経済産業局・津田哲史氏】「Local X」が書き換える、製造業と街のOS。予定調和のない共創がイノベーションを生む

