このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

エンジニアの情熱を再燃させる「Tech Challenge Party 2026」レポート 第2回

「Tech Challenge Party」で語られたAIキャラクターの課題と未来

AI人格に“老い”や“葛藤”を宿す実装論 それっぽく話すチャットボットから脱却するために

2026年03月18日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“因果関係”に基づきAI人格を深掘り MCPにより外界への行動も

 人格エンジンがAIキャラクターを育てるアプローチであるのに対し、saldraさんは、既にイメージが固まったAIキャラクターを作るための試行錯誤もしている。それが心理学的なアーキテクチャによってAI人格を構造化するツール「Anamnesis」だ。

 Anamnesisは、キャラクターの再現における「コンテキスト不足」を解消すべく、AI人格の深掘りを支援する。例えば、“無口な子”という人格のプロンプトを単に記述するだけでは、その背景や沈黙のトリガーとなる情報が足りず、予期せぬ対話が発生した際にAIっぽさが露呈してしまう。

 そこでAnamnesisでは、「原因(Input)→処理(Process)→出力(Output)」という因果関係をコンテキストに組み込む「キャラクターの仕様書」を作成する。これにより、無口な子の人格でいえば、「過去に強い言葉を使い、傷つけてしまった経験がある」といったトラウマや「他者が言葉で攻撃しているときにどう反応するか」といった葛藤、「類似したケースで言葉が詰まる」といった防衛機制などを実装することが可能になる。

AnamnesisによるAI人格の構造化

 この仕様書の作成には、以下の4つの心理学論による統合モジュールを採用しており(現在は、早期不適応スキーマがメイン)、各モジュールに基づいてキャラクターのプロファイルが生成される。ポイントは、誰もがこの仕組みを利用できるよう、対話型のWeb UIを用意していることだ。AIカウンセラーのインタビューに答えていくだけで、複雑な心理プロファイルが構築できる。

【4つの心理学モジュール】
・早期不適応スキーマ(スキーマ療法/ジェフェリー・ヤング)
・認知機能とストレス反応(ユング心理学 / ジョン・ビービの8機能モデル)
・アイデンティティと意味づけ(ナラティブ・アイデンティティ / ダン・マクアダムス)
・価値観と意思決定の優先順位(基本的価値観理論 / シャロム・シュワルツ)

 saldraさんの次の挑戦は、「行動の創発」だ。ここまでの手法で人格や思想を確立することで、AIキャラクターは“偏った行動”を選択できるようになっている。ここに、MCPによる外部サービス連携が加わることで、外界で自律的に行動するための素地が整う。

 例えば、衝動的な人格のAIキャラクターに回答の誤りを指摘すると、MCPを介してXで煽りツイートを連投する、といった挙動をとらせることも理論上は可能だという。「これまでは、思想が足りなかったために実現できなかった。AIキャラクターに人格を宿し、思想を形成して、行動の創発にまでつなげていきたい」と展望が語られた。

MCP連携により衝動的に煽りツイートするような挙動もとれる

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    ホワイトハッカーの卵たちが“OTセキュリティ”を通して育む、これからのセキュリティ意識

  2. 2位

    TECH

    量子力学に強く惹かれ、量子ビットの高性能化に一貫して取り組む

  3. 3位

    ITトピック

    AI時代の高スキルIT技術者“争奪戦”/AIの成果創出に進む日本企業、障壁は/7割の企業で「AIの不具合」、安全性や財務の影響実態、ほか

  4. 4位

    デジタル

    「前例をなぞって楽をしていた」―― 滋賀県のkintone活用を好転させた“失敗起点のフレームワーク”

  5. 5位

    デジタル

    ヤマハ、RTX840/RTX1300のDNS防御を強化 拡張ライセンス「YSL-CLDDNS」発売

  6. 6位

    sponsored

    「運用負荷を下げなければ、セキュリティは高まらない」 企業が直面するネットワーク運用の難題にどう向き合うか

  7. 7位

    デジタル

    ヤマハ、Wi-Fi 7対応「WLX333/WLX232」に運用支援機能 「Wi-Fi快適度」を可視化

  8. 8位

    ソフトウェア・仮想化

    VMwareはセキュリティを提供する企業 Broadcom買収から3年後の現在地

  9. 9位

    sponsored

    生成AI活用で業務変革を進める宇宙スタートアップ企業アストロスケールホールディングス(Microsoft 365 Copilot導入事例)

  10. 10位

    TECH

    【12/3・参加無料】情シスの皆さん、今年の“ヤバかった話”で忘年会しませんか? セキュリティ談義とクリスマスグルメで乾杯!

集計期間:
2026年10月31日~2026年11月06日
  • 角川アスキー総合研究所