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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第79回

【JSTnews3月号掲載】NEWS&TOPICS 革新的GX技術創出事業(GteX)/研究領域「水素」 研究課題「グリーン水素製造用革新的水電解システムの開発」

水電解における塩素発生の抑制につながる新発見

2026年03月13日 12時00分更新

文● 中條将典

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 再生可能エネルギーを用いて水素や化学燃料を製造する技術として、水の電気分解が注目されています。電解液中に塩化物イオンが少しでも残っていると、有毒で腐食性のある塩素ガスが生じるため、電気分解には極めて純度の高い水が必要となります。しかし、淡水は世界的に不足しており、微量の塩化物イオンが含まれる純度の低い水であっても、できるだけ塩素ガスを出さずに電気分解する技術が求められています。

 理化学研究所環境資源科学研究センターの中村龍平チームディレクターらの研究グループは、電解液に添加するアルカリ金属イオンの種類を変えると、塩素ガスの最大発生速度が大きく異なることを発見。微量の塩化物イオンが残留する電解液にリチウムイオン(Li+)が含まれる場合、セシウムイオン(Cs+)が含まれる場合と比べて、塩素ガスを33パーセント抑制できることを見いだしました。研究グループはこの現象を説明するために、電極の周囲で溶質の濃度勾配が生まれる「拡散層」の内側に、添加するアルカリ金属イオンの種類に依存する新たな拡散層が存在するモデルを提案。Li+では、Cs+に比べてこの拡散層が厚くなることで、塩化物イオンが通りにくくなり、電極に到達する量が少なくなることを示しました。

 この成果は、塩化物イオンの拡散速度が、水溶液中のイオンと水分子が形成する構造によって影響されるという新たな視点を提供するものです。低純度の水を電気分解に利用する技術基盤として「持続可能な開発目標(SDGs)」達成への貢献が期待されます。

研究チームが提案した電極近傍の拡散層のモデル。イオンの種類に依存しない従来の拡散層の内側に、共存するアルカリ金属イオンに依存する新たな拡散層が存在する。

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