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菌は裏切らない。不眠や仕事のパフォーマンス低下、実は“肌荒れ”が原因だった?

特集
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腸だけじゃない。“肌フローラ”というもうひとつの生態系

 ここ数年、「腸活」で睡眠やストレスの改善をうたう商品があふれている。乳酸菌飲料や発酵食品を取り入れて、体調が安定したという人も多い。「菌を整える」という考え方は、もう特別な健康法ではなくなった。

 この背景にあるのが、腸内に棲む微生物、マイクロバイオームだ。人間の体はおよそ40兆個の細胞でできているが、その数とほぼ同じだけ菌も共生している。つまり、人間とは菌とともに生きる生態系なのだ。

 そしてこの“菌の世界”は腸だけではない。肌の表面にも汗や皮脂をエサに暮らす菌がびっしりいて、いわば「腸フローラ」に対する「肌フローラ」がある。

 肌1平方センチあたりには数百万個の常在菌が棲み、そのバランスが崩れると乾燥、かゆみ、吹き出物、さらには加齢臭まで影響するといわれている。

腸と肌はつながっている

 興味深いのは、腸と肌の間に「腸脳皮膚相関」と呼ばれるつながりがあることだ。腸内環境が乱れるとストレスホルモンが増え、肌が荒れやすくなる。そして逆に、肌荒れやかゆみが続くと不快感で自律神経が乱れ、腸の調子まで悪くなることもある。

 さらに、肌の不調があると、睡眠の深さが下がりやすいという報告もあり、日中の集中力や判断力の低下につながることがある。肌トラブルは、見た目ではなく「脳のパフォーマンス」に影響しうる問題なのだ。

 感染症が気になるこの季節、除菌ジェルや抗菌ソープを多用すると、肌を守っている良い菌まで減ってしまい、負のスパイラルに陥るケースもある。

 「じゃあ、クリームでも塗ればいいのか?」というと話はそう単純でもない。必要な油分や保湿成分は人によって違い、闇雲なケアでは改善しないケースも多い。

東大発 MySkinが挑む「肌の健康診断」

 そこで、東京大学発のスタートアップMySkin株式会社が開発したのが、肌フローラを可視化する解析技術だ。絆創膏のような採取キットを頬に貼るだけで微生物を回収し、DNA解析で菌の種類や割合を特定する。いわば、肌版の健康診断 だ。

 このデータをもとにオーダーメイドの商品を作れれば、肌トラブルの傾向に合った、より的確なケアができそうだ。同社は現在、化粧品会社など40社以上と共同研究を進めている。

微生物採取キットMySkinキット

 腸活が当たり前になったように、肌のケアも、今後は身だしなみを超えて健康管理の一部として定着するかもしれない。肌は、睡眠や集中力に直結する意外と重要な外部デバイスだ。ジムで筋肉を鍛えるように、肌もまた整えれば調子が上がる。パフォーマンスを支えるもうひとつの“菌トレ”。これを機に、自分の肌のことも少し見直してみようかと思う。

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