あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第577回
アメ車のEV「キャデラック LYRIQ」に乗ってみた!522馬力モーターがもたらす超加速&静粛性に感動
2025年11月02日 15時00分更新
アメリカを代表する自動車ブランド「キャデラック」から、BEV(電気自動車)が登場。日本に上陸しました。「燃費が悪い」と言われて幾星霜のアメ車。果たしてBEVでも電費は悪いのでしょうか? そしてキャデラックのBEVを選ぶ理由はあるのでしょうか。
日本でイチバン売れている輸入EVは
実はアメ車だったりします
トランプ大統領は「日本人はアメリカのクルマを買わない」と、お怒りのご様子。その見解は正しいですが、貿易障壁とは関係ないのは誰もが知るところ。売れないのは、大きいとか燃費が悪いと考えられているからです。
ですが、ほかの同クラスの輸入車と比べると言われるほど大きくないこと、燃費も国産ハイブリッドには劣るものの、純ガソリンエンジン車としては普通であるということをお伝えしたつもりです。事実、日本で最も売れている輸入EVはアメリカのテスラだったりします。その数は昨年だけで約4500台。日本は電気自動車の普及が遅れている国ですが、それでもテスラが売れるのは、サイズ感と性能がよいからでしょう。
つまり(ブランド面での魅力を含めて)売れるクルマを作れば、大統領が望む台数かはともかく、日本でもアメリカ車は売れるのです。
そんな日本市場に上陸したリリック(LYRIQ)。そのサイズは全長4995×全幅1985×全高1640mm。ホイールベースは3085mm。このサイズは、キャデラックなXT5、他社に目を向けるとメルセデス・ベンツ「GLE」やBMW「X5」、アウディ「Q8」、電気自動車ならヒョンデの「IONIQ 5」あたりと同じです。
しかし、全長はこれらのクルマよりも10cmほど長かったりしますが……。実際に走らせてみると、2m近い車幅は確かに大きく、狭い路地では心が折れそうになることも。でもそれは、ライバル車にも言えることです。とにかく、最近の高級車は日本の道には大きいのです。
モーターは前後に配置し、システム最高出力は522馬力。最大トルクは610N・mとアメリカの伝統である6.2L OHVに匹敵します。搭載バッテリー容量は95.7kWhで、航続可能距離はWLTPモードで510km。同じようなバッテリー容量を持つ車種として、メルセデスEQE SUV(90.6kWh)の航続距離が542km(WLTCモード)、日産アリア B9が91kWhバッテリー搭載で640km(WLTCモード)ですので、車重や燃費計測方法の違いもありますが、あまり良くはなさそう。でも、500km以上は走れるのは良いと思います。
充電コネクターは助手席側にあり、CHAdeMO対応急速充電(90kW)の場合、約30分で約190km、50kWの場合は約30分で約120km走行分の充電ができるとのこと。
クーペSUVスタイルのため、車両後部に大きな面積がなくても(壁が近くても)バックドアが開くのは美質。もちろんスイッチひとつ開くパワーゲート対応です。
荷室はとにかく広いのひとこと! 5人乗車時で793L。電動格納式の後席を倒したら、最大で1722Lの空間が得られます。後席を倒した時はフルフラットになりませんが、それでもライバルを圧倒する荷室容量には唖然とさせられます。大きな荷物を載せることが多い人に、リリックはとてもオススメです!
後席の広さも印象的。シート表皮は非動物由来の合成皮革「Inteluxe」が標準で、試乗車のフルレザーシートは有償オプション(65万円)。さすがの質感で、アメリカのエグゼクティブは、ここに身をゆだねるのか、と想起させられます。USBだけでなくACが取れるのも美質。ノートPCをはじめとして、いろいろ活用できそうです。
運転席は右ハンドル。ガソリンエンジンのキャデラックが、左ハンドル設定のみでしたので驚きです。大型カーブドディスプレイの採用は同社の「XT4」と同様ですが、新聞紙をリサイクルしたペーパーウッドや、同じくリサイクル素材のアクセントファブリックといった、意識高い系の素材がふんだんに使われている点は異なるところ。
ステアリングホイールはボタンが少なめであるものの、ボタンは大きめの印象。走行セレクターはコラムシフト型で、メルセデスと同様です。ただメルセデスと異なり、一旦手前に引いてからチェンジします。また、アクセルペダルはオルガン式でした。
シート調整ボタンがドア側に設置しているのも、メルセデスと似ています。こちらの方が調整しやすいので、個人的には好印象です。
センターコンソールはシンプルそのもの。二階建て構造で、下段にはUSB Type-Cコネクターを配置します。
スマホトレイがアームレストに差し込むタイプなのは、ほかのキャデラックと同様です。アームレスト内にはUSB Type-Cが2系統用意されていました。
スマホをナビ利用するのも他のキャデラックと同様です。全画面ではなく、一部使うのはちょっともったいないように思いました。
足周りは意外と硬いが
モーターでグイグイ引っ張ってくれる
ワンペダルにも対応し完全停止もできます。ですが、アクセルを抜いただけで急減速するのは、ちょっと使いづらい印象を受けました。
モーター駆動ならではの静粛さとトルクフルな走りが印象的。足は現行キャデラックよりも硬めで欧州車かと思うほど。現行のXT4に近くスポーティーと捉えるか、キャデラックらしさが希薄と見るかは人それぞれ。
走行モードは4種類。マイモードは今までのキャデラックになかったモードですね。
ユニークなのが、左手に回生ブレーキパドルを配置しているところ。これは回生量を変更するスイッチではなく、パドルを引いている間に回生を行うというもの。オンかオフではなく、無段階に調整できるようで完全停止にも対応します、これを巧みに使うと、カックンブレーキ無しでの停車も可能です。ちなみにブレーキペダルだけですと、カックンブレーキになりやすい気がしました。
電気自動車というエクスキューズはつくものの、個人的にはかなり気に入った1台。1100万円~という価格にふさわしいインテリアと風格があり、走りもよい。今後、キャデラックはより小型のBEVも上陸予定なのだとか。BEVによって、日本におけるキャデラックブランドを再定義する時期が来たかもしれません。
ともあれ、大型のBEV SUVを検討されている方は、一度試乗してみることをオススメします。

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