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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第187回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月31日~6月6日

ランサム被害から完全復旧できる企業は3割未満、課題は/メディア総接触時間が増加、“放送 VS. 配信”の次へ進む、ほか

2025年06月09日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2025年5月31日~6月6日)は、5社に1社が被害を受けているランサムウェア感染と復旧の実情、変化するメディア接触の最新動向、デジタルビジネス化支援サービス市場、DX/IT部門で深刻な人材不足の実態、内部不正対策などに役立つ画面操作監視市場についてのデータを紹介します。

[セキュリティ][ランサムウェア] ランサムウェア感染後、完全復旧ができない企業が7割に達する(アイ・ティ・アール、6月4日)
・2024年以降のランサムウェア感染企業で完全復旧できたのは30%、以前より悪化
・感染企業の約半数で「バックアップデータ」も暗号化被害、こちらも悪化
・復旧までに「1週間以上」を要する企業が70%、「被害範囲の把握」がネック

 315件の回答から集計した「企業のサイバーリカバリ実態調査」より。2024年以降に「ランサムウェア感染した」企業は19%と、5社に1社を占める。感染企業を業種別に見ると「情報通信」(28%)、「建設・不動産」(24%)、「サービス」(23%)が上位で、従来の「卸売・小売」や「プロセス製造」から攻撃ターゲットがシフトしている。感染から「完全復旧ができない」企業は70%に達しているが、その主因はバックアップデータへの侵害拡大。また、復旧過程の課題としては「被害範囲・影響把握に想定以上の時間を要した」が最多で、ほかにも「安全なバックアップデータの判別が困難」「復旧スキル人材の不足」も深刻な課題に挙がっている。

 ⇒ ランサムウェア攻撃が高度化したことで、「バックアップから復旧する」という単純なサイバーリカバリ戦略だけでは対応困難な状況になっていることが、鮮明になりました。バックアップデータを書き換え/削除不能にする「イミュータブルバックアップ」、バックアップデータをネットワークを隔離する「エアギャップバックアップ」など、新たな手法の導入が重要だとアドバイスしています。

ランサムウェアの業種別感染被害の状況(出典:ITR)

ランサムウェア感染後のシステム復旧状況(出典:ITR)

ランサムウェア感染からシステム復旧までに生じた問題(出典:ITR)

[メディア][社会] 「スマホ接触時間」が過去最高に、テレビでは「TVer」配信視聴が本格定着(博報堂、2025年2月)
・メディア総接触時間は1日平均7時間強、前年から微増
・スマートフォンの接触時間(1日平均165.1分)が過去最高を更新
・配信サービス利用は軒並み横ばい、ただし「TVer」は堅調に成長

 15~69歳の男女650人に対する、博報堂・メディア環境研究所の年次調査「メディア定点調査2025」より。1日あたりのメディア総接触時間は平均440.0分(7時間強)で、前年比8分増加。その増加を「携帯電話/スマートフォン」が牽引。これまで減少傾向だった「テレビ」「雑誌」は下げ止まり、「ラジオ」「新聞」はプラスに転じている。定額制(サブスク型)の「動画配信」「音楽配信」は横ばいの中、「TVer」のみは前年比5.9ポイント増の59.7%と堅調に成長。また、インターネットに接続できるコネクテッドTVの普及で、TVスクリーンでの配信コンテンツ視聴が増加するなどの動きも見られる。

 ⇒ ネット配信番組を「TVスクリーンで視聴する」というスタイルが本格的に定着したようです。“放送 VS. 配信”という単純な競争関係ではなく、コンテンツの視聴スタイルが多様化したと言えそう。

メディア総接触時間の時系列推移。コロナ禍の2021年がピークだが、2025年は増加に転じている(出典:博報堂)

配信サービスの利用率の時系列推移。TVerが堅調な伸びを示している(出典:博報堂)

TVスクリーンで見ているコンテンツの利用率。録画は減り、見逃し配信、無料/有料動画が増えている(出典:博報堂)

[DX] デジタルビジネス支援のプロフェッショナルサービスが急成長、2024年の市場は1.5兆円(IDC Japan、6月5日)
・デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場、2024年は前年比約28%増
・成長の牽引役は「AI技術の企業活用」と「ITモダナイゼーション」
・2029年まで年平均成長率18%強で成長、2029年には3.5兆円市場を予想

 デジタル製品/サービス/エクスペリエンスなど、企業の「デジタルビジネス」実現に向けた支援サービスのうち、5種類のサービス(ビジネスコンサル、ITコンサル、カスタムアプリケーション開発、システムインテグレーション、ネットワークコンサル&インテグレーション)を合計した市場の成長予測。2024年は、AI活用やITモダナイゼーションが市場を牽引して、前年比27.8%増の成長。今年以降も、5種類のサービスすべてが高成長を継続すると予想している。

 ⇒ 米国の関税政策や景気の先行き不透明感などがありつつも、デジタルビジネス化とAI適応支援の需要が市場を牽引する見込みだとまとめています。

国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場予測、2024~2029年(出典:IDC Japan)

[人材][DX] [情シス] 企業の77%が人材不足、ワースト3部門を「DX/IT関連」が占める(インターネットイニシアティブ/IIJ、6月2日)
・企業の77%が人材不足、トップ3は「DX/ITエンジニア/情シス・社内IT」
・「現在の採用経路で人材補充できると感じる」企業は30%に満たず
・情シス、DX関連部門の約4割が「IT人材不足が社内で認識されていない」

 「情シス・DX部門の人材不足に関する調査」より。調査対象企業の77.0%が「人材不足」を感じており、部門別では「DX関連」など上位3部門をIT関連が占めた。人材補充は「キャリア、中途採用」が48.0%で最多だが、その経路で補充できるという回答は3割に満たなかった。57.2%が「応募が少ない」と回答、その理由として「自社のブランド力が低い」が最多、「給与条件が悪い」などが続いた。情シス・DX部門の人材不足について社内で認識されていると感じるという回答は60%を切った。

 ⇒ IT人材不足の深刻さが改めて浮き彫りに。「応募が少ない」「ブランド力が低い」そして「社内で人材不足が認識されていない」など、課題の背景が見える調査結果となっています。

所属部門の人員は不足していると感じるか(出典:IIJ)

人員が補充できない理由、最多は「応募が少ない」(57.2%)(出典:IIJ)

足りていないと感じる人材は「専門知識、スキルを持った人材」がトップ(出典:IIJ)

[セキュリティ][監視] ガバナンス強化需要で成長を見せる「画面操作監視」市場(アイ・ティ・アール、6月3日)
・画面操作監視市場、2024年度は22億4000万円、前年度比15%超の増加を予測
・操作画面を録画し、迅速なインシデント原因究明やガバナンス強化につなげる
・2028年度まで年平均7.5%の成長、およそ28億円規模への到達を見込む

 業務PCのデスクトップ画面を撮影/記録し、必要に応じて操作状況を動画で再現できるようにする「画面操作監視」製品の国内市場調査。インシデント発生時の迅速な原因究明、内部不正対策、オペレーションミス検知に有効で、ログの相関分析だけでは見えない操作の経緯や詳細を可視化できる点が評価されている。2023年度は、前年度比19.0%増の19億4000万円となった。2024年度も15.5%の増加が予想されている。

 ⇒ 機密情報の持ち出しなど「内部不正」の痕跡は、EDRなどのログ記録/分析だけでは把握できないため、こうしたソリューションが望まれているとコメントしています。

画面操作監視市場規模推移および予測、2022~2028年度(出典:ITR)

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