最新パーツ性能チェック 第466回

Radeon RX 9060 XTは6.5万円でVRAM 16GBのお値打ちGPUになれたか？

AI系の処理ではRX 9060 XT 16GBがRX 7800 XTを上回る

「UL Procyon」（LLM）

　ここから先はAI系の検証となる。最初に「MLPerf Client」を利用し、LLMのパフォーマンスを検証しよう。4つの課題（Content Generation/ Creative Writing/ Summarization, Light/ Summarization, Moderate）を出し、その際のトークン生成スピードや最初のトークンまでの時間を計測するものである。最初のトークンまでの時間およびトークン生成スピードについて、全4課題すべての平均値のほかに、最も軽い課題と重い課題のデータも見てみよう。

MLPerf Client：最初のトークンまでの時間（全テスト平均）

MLPerf Client：トークン生成スピード（全テスト平均）

MLPerf Client：4つのお題のうち最も軽いContent Generationにおける最初のトークンまでの時間

MLPerf Client：Content Generationにおけるトークン生成スピード

MLPerf：4つのお題のうち最も重いSummrization, Moderateにおける最初のトークンまでの時間

MLPerf：Sumamrization, Moderateにおけるトークン生成スピード

　RX 9060 XT 16GBはトークン生成スピードにおいてはRX 7700 XTやRX 7800 XTに大きく後れをとるものの、応答性（最初のトークンまでの時間）においてはRX 7700 XTやRX 7800 XTと同等以上という結果が得られた。性能のバランスでいえばRTX 5060 Ti 16GBが優れているが、これはAIに強いというGeForceならではのカラーが出たといえる。

「UL Procyon」（Stable Diffusion XL）

　最後はUL Procyonに収録されている「AI Image Generation Benchmark」を使用した。今回はVRAM 12GB以上のカードが大半を占めているため、「Stable Diffusion XL」を選択した。RadeonはONNX Runtime、GeForceはTensorRTを利用している。

UL Procyon：AI Image Generation Benchmarkのスコアー。RTX 5060 Ti 8GBはVRAM搭載量の問題で除外した

UL Procyon：AI Image Generation Benchmarkにおける1枚あたりの生成時間

　このテストではRadeonならVRAMは16GB以上、GeForceは10GB以上必要とする。そのためRTX 5060 Ti 8GBは時間がかかりすぎるためテストから除外している。最も出力スピードが速いのはRX 9070、そのすぐ後をRTX 5060 Ti 16GBが追いかけているが、RX 9060 XT 16GBここでようやくRX 7800 XTに下剋上を決めることができた。CU数が少ないためAI Acceleratorの数も限られているものの、その制約の中でもRX 7800 XTをしっかり上回った点に関しては高く評価したい。

ゲームでは大逆転できるのか？

　以上で前編は終了だ。いつものルーティンのつもりでゲーム編は後編としたのだが、検証結果がことごとくRX 9060 XT 16GBの良さが見えてこない結果になった点は反省している。最大の問題はRX 9070に比べCU数を絞りすぎたことであり、それがRX 9070と大きな性能差を生んだだけでなく、旧世代の競合価格帯にあるGPU（RX 7700 XT/ RX 7800 XT）に対して下剋上を難しくしている。

　3DMarkの一部テストやAIなど、RX 9060 XT 16GBの良い部分が見えた点はいくつかあったが、CU数の差がモノを言うテストでは遠く及ばないという印象が強い。RX 7800 XTを比較に加えたのは、もしかしたら並ぶかもという淡い期待があった（Stable Diffusionでは実際並ぶ以上の結果を出している）が、これを加えるのは少々やり過ぎだったと反省している。

　反省はさておき、なぜAMDはここまで旧世代上位モデルとの性能差を容認しているのか？　答えはライバルRTX 5060 Tiをコストパフォーマンスで叩きのめすことしか眼中にないからである。後編のゲーム検証では、6.5万円スタートのRX 9060 XT 16GBが同価格帯〜1万円上のRTX 5060 Ti 8GB/ 16GBにどう対抗していくのかを検証していこう。

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