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最新パーツ性能チェック 第466回

Radeon RX 9060 XTは6.5万円でVRAM 16GBのお値打ちGPUになれたか?

2025年06月04日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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RTX 5060 Ti 8GB/ 16GBとの対決

 今回の検証環境は以下の通りだ。RX 9060 XT 16GBとの比較用に、上位であるRX 9070、前世代であるRX 7600 XTをまず準備。さらにRX 7700 XTとRX 7800 XTの2モデルを用意した。RX 7700 XTは単に旧世代の格上を上回れるのか否かを確認するために、RX 7800 XTは同じVRAM 16GBで格上であるから、という理由である。

 さらにライバルのGeForceから、RTX 5060 Ti 8GBと16GBを準備した。価格的にはRTX 5060の方が好適ではあるが、RTX 5060の無印はRX 9060 XT 8GBのレビューの楽しみとしてとっておきたい。

 GPUドライバーはRX 9060 XT 16GBのみレビュー用のβ版、それ以外のRadeonはAMD Software 25.5.2、GeForceはGameReady 576.52を使用している。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性およびカーネルモードのハードウェア適用スタック保護、HDRなどは一通り有効化。ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 7 9800X3D」(8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPUクーラー EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.25)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカード ASRock「AMD Radeon RX 9070 Steel Legend 16GB OC」(RX 9070、16GB GDDR6)
SRock「AMD Radeon RX 9060 XT Challenger 16GB OC」(RX 9070、16GB GDDR6)
AMD「Radeon RX 7800 XTリファレンスカード」(RX 7800 XT、16GB GDDR6)
ASRock「AMD Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC」(RX 7700 XT、12GB GDDR6)
ASRock「AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC」(RX 7600 XT、16GB GDDR6)
Palit「GeForce RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB」(RTX 5060 Ti、16GB GDDR7)
ZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 5060 Ti 8GB Twin Edge OC」(RTX 5060 Ti、8GB GDDR7)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)、
Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニット ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

RX 7600 XTからは確実に速いが、CUの少なさがネックになる

 まずは「3DMark」のスコアー比較から始めよう。ラスタライズ系テストとレイトレーシング系テストでグラフを分割している。

3DMarkのスコアー(ラスタライズ系)

3DMarkのスコアー(レイトレーシング系)

 まずRX 9060 XT 16GBはRX 9070に対して36〜50%下という位置付けになる。負荷の軽いFire Strikeでは比較的差が小さいが、高負荷かつRay Acceleratorの数が重要なSpeed Wayでは大差が付いている。CU数がRX 9070の6割弱しかないことを考えたら妥当な着地点と言えるが、ちょっと差が付きすぎ感は拭えない。1世代前のRX 7600 XTに対しては最大58%向上、平均でも38%スコアーが伸びているなど、最新世代ならではの強さを発揮できている。

 次にRX 9060 XTが下剋上を果たす、すなわち格上のRX 7700 XTやRX 7800 XTを上回れるかという観点だが、こちらはあまり良い結果が得られなかった。RX 7700 XTに対してはSteel NomadなどでRX 9060 XT 16GBが並ぶものの、全体としてはRX 7700 XTの同等〜わずかに下という位置付け。RX 7800 XTに対しては平均20%程度下という位置付けになった。

 これはシンプルにRX 9060 XT 16GBのCU数の少なさやメモリーバス幅の狭さといった基本スペックに原因があると思われる。RX 7800 XTの流通量はまだ相当数あり、安いものなら7万円台中後半で購入できる。予算1万円差であれば旧世代のRX 7800 XTを選ぶのも悪くない。

 そしてライバルRTX 5060 Tiとの対決においてもRX 9060 XT 16GBはやや不調に終わる。Steel Nomadでは唯一勝てているものの、それ以外のテストではスコアーで勝てていない。ただこのテストはVRAM 8GBで十分間に合う設計になっているため、RTX 5060 Ti 8GBの弱点を突くことができていないといえる。

 続いては消費電力の比較だ。消費電力の計測は「Pownetics v2」を用い、電源ユニット→システムに流れる電力を直接計測している。アイドル中とはアイドル状態で3分間放置した際の平均値、高負荷時とはSteel Nomad実行中の値となる。高負荷時は平均値/ 99パーセンタイル点/ 最大値の3種類の観点で集計した。

システム全体の消費電力。ATXメインパワー+EPS12v+16ピン/ 8ピン+PCI Express x16スロットを流れる電力の合算

Total Board Power(TBP)。上のグラフのデータから16ピン/ 8ピン+PCI Express x16スロットを流れる電力のみを抽出したもの

 システム全体ではどのGPUでも平均300W台であり、瞬間最大値でも500Wに到達しないGPUばかりだ。RX 9060 XT 16GBのTBPは平均180W台と低く、RTX 5060 Tiとほぼ同じである。99パーセンタイル点の値から微妙に上振れはするものの、RX 9060 XTも電源ユニットの交換をあまり考慮しなくても運用できる、扱いやすいGPUになっているといえる。

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