【JSTnews6月号掲載】戦略的創造研究推進事業CREST/研究領域「 実験と理論・計算・データ科学を融合した材料開発の革新」 研究課題「 ナノ構造制御と計算科学を融合した傾斜材料開発とスピンデバイス応用」
光技術で磁化のショットノイズを測定する新手法、量子デバイスの開発に道
2025年06月12日 12時00分更新
物理学の実験においてノイズは通常、精密な測定を妨げる邪魔者ですが、ノイズが重要な情報を担うことがあります。その典型例が、物理系の何らかの流れを担う粒子の数が統計的に変動することで生じる「ショットノイズ」です。
磁石は、電子が持つ小さな磁石に相当する電子スピンが同じ向きにそろうことで磁力を持ちますが、電子スピンは連続した値をとらず、磁石の向きと強さを表す物理量である磁化も非連続の値をとります。物理学では、連続しないとびとびの値をとることを量子化と呼びます。最近になって、磁石にマイクロ波を当てた際に流れる電流の変化を測定することで、磁化のショットノイズを観測する提案がされてきましたが、実験が困難でこれまで実現されていませんでした。
東京大学物性研究所の加藤岳生准教授らの研究チームは、近年の光計測技術の進歩により、磁化を効率良く高速で測定できることに着目。磁化のショットノイズを光技術で測定する新手法を提案しました。同チームは、中で安定した状態にある磁石にパルスレーザー光を当てて電子のスピンの向きを乱して元の状態に戻っていく時に、磁化の平均値周りの揺らぎとして観測されるショットノイズを理論的に定式化。このショットノイズを測定することによって、磁化の量子化の大きさを決定可能であることを示しました。
今回の成果により、1個1個の電子スピンの変化が磁化のショットノイズを通じて測定できるようになりました。磁石中の電子スピンを操作して情報を保持する量子デバイスの開発だけでなく、レーザー技術の有望な応用先としても重要です。
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