連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第184回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月10日~5月16日
トランプ関税は企業のIT投資戦略にも大きく影響/やや意外? 「デジタル経済への消費者の信頼度」で日本が最下位、ほか
2025年05月19日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2025年5月10日~5月16日)は、米トランプ政権の関税政策が日本企業のIT投資戦略に与える影響、求人サイトの掲載賃金で見る賃上げ動向、2025年の国内サステナビリティ/ESGサービス市場、ITフリーランス向けの案件倍率、デジタルエコノミー(デジタル経済)に対する消費者の信頼度の国際比較、についてのデータを紹介します。
[経済] “トランプ関税”は日本企業のIT投資戦略にも大きく影響(アイ・ティ・アール、5月13日)
・米トランプ政権の関税政策により、71%が「自社の業績が悪化する」と予測
・今年度の「IT投資計画の見直し」意向は44%、来年度(2026年度)は58%
・支出はハードウェアからクラウドへシフト、国内ベンダーとの取引強化傾向も
米国の相互関税政策(通称:トランプ関税)の発表を受け、4月22日~24日に国内企業のIT戦略/実務役職者1271名にIT投資動向調査を実施した。トランプ関税で「自社の業績が悪化すると思う」とした回答者は71%。中でも自動車製造業は影響を深刻に受け止めており、悪化を懸念する声は90%に達した。また、今年度の「IT投資計画の見直し」の意向がある(実施済み/検討中/検討可能性あり)企業は合計44%、さらに来年度(2026年度)は58%が見直し意向を持ち、IT戦略の中期計画見直し意向も高い。今年度の見直し内容は、IT製品/サービスの価格上昇を見越して「予算の増額」(42%)が「減額」(25%)を上回った。
⇒ トランプ関税はIT戦略にも影響を与えています。「IT戦略上、優先度が高まる取り組み」として、「コスト管理の厳格化」(28%)、「国内ITベンダーとの取引強化」「海外製品・サービスの調達コスト上昇への対応」(いずれも25%)がトップ3となっています。
[働く][賃金] 2025年4月の求人掲載賃金、伸び率はやや鈍化したものの引き続き伸びる(Indeed Japan、5月16日)
・Indeedにおける2025年4月の求人掲載賃金上昇率は、前年比3.6%増
・2024年以降は、物価上昇率と賃金上昇率とのギャップが縮小
・一部の“人手不足”職種に限らず、幅広い職種で掲載賃金が4%以上アップ
Indeedリサーチ部門による、日本の求人掲載賃金レポートより。2024年の賃金上昇率は「右肩上がり」の勢いだったが、2025年初頭からはその伸びがやや鈍化している。それでも、4月は前年同月比で3.6%の増加だった。2022~23年は賃金上昇率が物価上昇率に追いつかない状況だったが、2024年以降はそのギャップを解消する動きが見られるという。
⇒ 賃金上昇率が鈍化した理由としては、一部企業で採用活動への注力が低下したこと、賃上げの先行実施が一巡したこと、国際的景況感の悪化への警戒感や不確実性が高まったことがあると分析しています。
[サステナビリティ][ESG] 2025年の国内サステナビリティ/ESGサービス市場は前年比15%の伸びを予測(IDC Japan、5月13日)
・2025年の国内サステナビリティ/ESGサービス市場は2735億円に成長
・2024~2029年の年平均成長率(CAGR)は16.0%と予測
・国内、EUの法改正に伴う情報開示対応が需要を後押し
国内サステナビリティ/ESGサービス市場予測。2025年の国内サステナビリティ/ESGサービス市場規模(支出額ベース)は前年比15.6%増の2735億円を予測。2029年には4962億円規模に達するという。サステナビリティに関する情報開示基準として、国内ではSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)基準の最終化、またEUではCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)の適用と簡素化を目的とした法案公表という動きがある。これがコンサルティングサービスへの需要につながり、非財務情報関連市場が大きく伸長すると予想している。
⇒ 法改正が大きな成長要因となるサステナビリティ/ESGサービス市場。SSBJ、CSRDに対応するための投資が増加し、2026年まで2桁成長が続く予測となっています。
[働く][賃金] ITフリーランスに対する需要、2025年第1四半期は案件倍率7.8倍(ギークス、5月12日)
・2025年第1四半期のITフリーランスの案件倍率は7.8倍
・社内システム構築、業務効率化など「DX推進」目的の案件が多い
・人気スキルは「JavaScript」「PHP」、「TypeScript」「Python」の需要も増加
同社掲載のITフリーランス向け案件数と、案件を探すITフリーランスの人数から算出した「案件倍率」のレポート(2025年1月~3月版)より。同四半期は案件数が前年同時期よりも増加し、案件倍率は7.80倍に。また、案件を探すフリーランスも前年同期比で17%の増加。「DX推進」を目的とした案件が多く、そのほかにはマイナ保険証への移行、物流業界の法改正などに対応するための案件、生成AIやLLMといった先進技術に関わる案件も増加している。
⇒ 人気スキルについても分析しています。TypeScript人気は「JavaScriptからの移行」、Python人気は「AI開発の需要」が主たる要因とのこと。
[社会] 「デジタル経済への信頼度」日本は最下位、トップ3は中国、UAE、サウジ(Checkout.com、5月15日)
・デジタルエコノミー信頼指数、トップ3は中国、UAE、サウジ
・デジタルエコノミーへの信頼の高さと、GDP成長率の高さに相関関係あり
・日本の消費者の信頼が低いのは「生体認証ツール」「ブロックチェーン」「AI」
デジタル決済企業のCheckout.comが、世界16カ国における消費者の「デジタル技術の利用状況と行動」「システムへの信頼」「先端技術の受け入れ意欲」に基づき「デジタルエコノミー信頼指数」を算出した。トップは10点満点中8.6点の中国、以下UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビアが続く。日本の信頼指数は2.6点で、16カ国中で最下位。地域的傾向として、デジタル経済に対する信頼度は、中東地域で圧倒的に高いという。
⇒ 全体的な傾向としては、クレジットカード決済が普及している国のほうが、デジタル経済への信頼という点で、現金決済から直接(一足飛びに)デジタル・ウォレットへ移行した新興国よりも信頼度が低いという“リープフロッグ現象”が見られるそうです。

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