「動画の監視」「公開ダッシュボード」など顧客体験向上の新機能も
オブザーバビリティの負担増 New RelicはAIエージェントのエコシステムで解決
2025年03月24日 08時00分更新
開発者向けに、APM(アプリケーションパフォーマンス管理)などの観測機能を提供するところから始まった“オブザーバビリティツール”。多種多様な洞察を得られるようになったが、膨大な量のアラートをさばいたり、理解したりすることが困難になりつつある。
こうした課題を、AIエージェントをはじめとする生成AIで解決しようとしているのがNew Relicだ。同社は、2025年3月19日、インシデント対応のプロセスを高速化するAIエンジンのアップデートを発表した。
同社の執行役員 技術統括 兼 CTOである松本大樹氏は、「オブザーバビリティの民主化をこれまで以上に進めるために、われわれは同ツールを進化させようとしている。具体的には、AIエンジンを強化して、システムの変化や障害を容易に理解・予知できる仕組みづくりに注力している」と説明する。
ビジネスのダウンタイム削減にAIエージェントを活用
New Relicでは、2024年から生成AI機能の提供をスタートした。ひとつは、自然言語を介してオブザーバビリティツールを操作できる生成AIアシスタント。もうひとつが、LLMやベクトルDBを含むパフォーマンスやリソースを可視化する、生成AIアプリケーション向けのAPMである。
そして、2025年から新たに注力するのが、“AIエージェント(Agentic AI)”の適用領域拡大である。同社は、ITシステムの課題をNew Relic単体だけで解決するのではなく、各社のAIエージェントとエコシステムを形成して、New RelicのAIエージェントと連携したり、情報を共有し合ったりすることで、対応できる問題を広げていくというアプローチをとる。
今回は、AIを用いてビジネスのダウンタイムを削減する、つまり、インシデントを検知して解決するまでの時間を短縮するためのAIエンジンの強化を発表した。現状、インシデント対応のプロセスは、さまざまなツールやデータソースを駆使する必要がある。情報のサイロ化などで効率が下がり、トラブルシュートが長期化しているものを、AIで解決するアップデートとなる。
最初のアップデートが、初期対応に必要な情報をAIが自動収集する「Response Intelligence」だ。New RelicのIntelligent Engineが、複数のツールやデータをまたがり人が対応していた業務を代行。テレメトリーデータやITSMなど関連ツールの情報をNew Relicに集約して、「インシデントの影響分析」「過去の類件とその対応」「対応策」をまとめて提示してくれる。
2つ目のアップデートが「Agentic Integrations」の強化だ。上記のResponse Intelligenceでも用いられる、関連ツールのAIエージェントとの連携が拡大した。これまでのGitHub CopilotやAmazon Q Businessに加えて、ServiceNowとGoogle GeminiのAIエージェントと連携。今後も、エコシステムを拡大していくことで、ツールの行き来やデータの突合などに割く時間が減り、インサイトに基づく意思決定に集中できるようになる。
最後は「Predictions」の機能だ。AIが応答時間などの過去データを学習して、インシデント発生自体を予測。問題が起きる前にプロアクティブに対処できるようにする。New Relicのコンサルティング部 兼 製品技術部 部長である齊藤恒太氏は、「技術的なデータだけではなく、アクセス推移や離脱率、売上といったビジネス的なKPIも統合していくと、ビジネスの意思決定につながる予測も可能になっていくのではないか」と説明する。
この3つのAIエンジンの強化は、現在プレビュー版で提供されている。
