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New Relicが語る小売業界のオブザーバビリティの現状と課題

三越伊勢丹、オブザーバビリティ強化で「サロン・デュ・ショコラ」の顧客接点を可視化

2024年02月29日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 オブザーバビリティプラットフォームを提供するNew Relicは、2024年2月22日、リテールDXの最新動向に関する説明会を開催した。

 冒頭、New Relicのコンサルティング部 兼 製品技術部 部長である齊藤恒太氏は、小売業界のDXの現状と同業界のオブザーバビリティに関する調査結果について解説。

 小売業は、国内の全産業における売上高がNo1の業種である。その一方で、IPA「DX白書2023」によるとDXに取り組む企業は23%にとどまり、金融(45%)やインフラ(32%)など他業種と比べて遅れている現状がある。「日本の経済を支える小売業のDXが加速することで、日本のデジタル競争力が高まる」と齊藤氏。

New Relic コンサルティング部 兼 製品技術部 部長 齊藤恒太氏

 小売業におけるDXの課題として、ECのフロントから商品管理の基幹系まで、複雑にシステムが絡み合ってサイロ化しており、ベンダーやSlerへの依存も高い。一方で、コロナ禍を経た新ビジネスやクラウドリフトの推進など、光明もみえていると齊藤は語る。

小売業界の課題は、顧客体験向上と安定稼働の両立

 小売業におけるオブザーバビリティの現状を明らかにすべく、New Relicでは日本を含む全世界15か国の約1700人を対象とした「2023 オブザーバビリティ予測レポート」から、小売・消費財業界の173社の回答を分析。齊藤氏は、オブザーバビリティを「システム全体のデータをリアルタイムに取得し続けて“常にシステム全容の状態把握と改善ができる状態”」と定義する。

 調査では、重大障害の発生頻度や検知時間、機会損失について、全業種と小売業で比較している。

 週1回以上重大障害が発生した企業の割合は、全業種平均の31.9%と比べて、小売業は36.4%とやや高い結果となった。重大障害を30分以内に検知できた割合は、全業種は48%で小売業は39%。重大障害による年間の機会損失も、小売業は全業種より28%も高い995万ドル(中央値)と、総じて小売業におけるオブザーバビリティが遅れていることが判明している。

全業種平均と小売業を比較した重大障害の発生頻度・検知時間・機会損失

 オブザーバビリティ機能の導入に関しても、全17分野中10分野以上導入している企業は36%(全業種は42%)となり、「小売を支えるシステムの状態を把握できる観測性が、まだまだ持てていない」と齊藤氏は強調する。加えて、69%がオブザーバービリティに4つ以上のツールを使用しているなど、ツールにおけるサイロ化も顕著になっている。

全業種平均と小売業を比較したオブザーバビリティ機能の導入分野・利用ツール数

 一方で、いち早くオブザーバービリティに投資した企業では、投資に対して2倍のリターンが得られていると回答。特に、オブザーバビリティにより顧客体験を理解・改善することで収益につながった企業が、他の業種と比べて多かったという。

三越伊勢丹はNew Relicで“サロン・デュ・ショコラ”の見えないトランザクションを可視化

 説明会では、小売業でオブザーバビリティを実践する三越伊勢丹の取り組みについて、同グループで情報システムを担う、三越伊勢丹システム・ソリューションズ(IMS)の藤本忍氏より披露された。

三越伊勢丹システム・ソリューションズ ICTサービス事業部付 シニアマネージャー 藤本忍氏

 三越伊勢丹は、“最高の顧客体験”を提供するためのICT基盤において、“サイロ化されたシステム・機能・データのモダナイズ”と“レガシーシステムの運用コストの最適化”という2つの課題を抱えていた。

 この課題を解決するべく、2018年度よりICT基盤の改革に着手。新たなプラットフォームは、マイクロサービスやコンテナ、クラウドネイティブを採用して“自動化”と“セルフサービス化”を推進するというコンセプトを定めた。

三越伊勢丹のICT基盤改革のコンセプト、2018年度より段階的に取り組む

 IMSでは、“ビジネスプラットフォーム”と“DevOps基盤”の2つの基盤を整備。ビジネスプラットフォームでは、小売業界に必要な汎用的な機能をマイクロサービスとして実装でき、レガシーシステムからの段階的な切り替えを進めた。DevOps基盤では、インフラ領域を開発チームでも担えるようになり、開発生産性や保守効率が格段に向上したという。

 このICT基盤の改革により、開発スピードは向上、新規サービスを最速で約3か月で開発するケースも生まれる。また、DevOpsや内製化が進むことで、システム運用コストを、2018年度から2021年度で50%削減することができた。

ICT基盤改革による成果

 しかし、上手くいくことばかりではなかった。三越伊勢丹は、年に1度、高級チョコレートの祭典である「サロン・デュ・ショコラ」を開催。百貨店の枠を超え、年々その規模は拡大していた。それを支えるシステム基盤も、マイクロサービス化し、店頭POSや顧客アプリ、ECサイトなど、ありとあらゆる場面で会員の認証を処理していた。万全の体制で臨んでいたが、重要なトランザクションに認証が集中することによりダウン、障害が発生してしまったという。

 その後、原因分析を経て導入したのが、アクセス集中時にウェイティング環境を用意する「待合室」サービスとオブザーバビリティプラットフォームのNew Relicだ。「リアル店舗であれば、顧客の情報を絶えず把握することができるが、オンラインではそれが叶わずに苦慮していた。苦渋の選択として待合室を導入したが、可能な限り待機時間を短縮できるよう、安全な閾値を観測するためにNew Relicを採用した」と藤本氏。

 フロントアプリとマイクロサービスにNew Relicのエージェントを入れ、見えていなかったトランザクションを可視化。詳細は明かされなかったが、セキュリティ強化にもNew Relicを活用しているという。

New Relicの採用、上段スクリーンショットではオンラインのタッチポイント、下段はレスポンスなどボトルネックを可視化している

 藤本氏は、「オンラインでも顧客接点を可視化することで、データに基づく意思決定ができる。マイクロサービスを進めても、その中でまたサイロ化に陥ってしまったが、オブザーバービリティで解消できた」と説明。システム部門とビジネス部門が顧客の状況把握のためにつながるという効果も得られたという。

 IMSは、これらの三越伊勢丹のICT基盤の改革で培ったノウハウを小売業界へ還元すべく、DX伴走支援サービスも展開している。

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