BYDジャパンは24日、都内で「BYD事業方針発表会2025」を開催し、新型のSUV型BEV(バッテリーEV=電気自動車)「BYDシーライオン7」と、BEVバス「J7」を今年中に発売すること発表した。
さらに年内にPHEV(プラグインハイブリッド=充電可能なハイブリッド車)のお披露目、2026年からBEVトラックの発売を予定していることを明かした。
3年連続でBEVとPHEVの販売台数世界1位を達成!
BYDジャパンの劉 学亮 代表取締役社長は、会の冒頭で2025年がBYD創設30周年、BYDジャパン創設20周年、そして自動車販売3年目の節目の年であると挨拶。
そして昨年の業績を振り返り、BYDはグローバルで前年比41%アップの約427万台(乗用車425万台、商用車2万台)を販売し、3年連続でBEVとPHEVの販売台数世界1位を達成したと報告。うち42万3375台を輸出したことを明かした。
続いてBYDジャパンの20年の歩みを振り返り。当初は電気機器用バッテリーの専売業者であったこと、15年前の2010年に群馬県館林市に拠点を置く金型メーカー、オギハラ(現:TMC)の舘林工場を買収。BYDにとって欠かせない企業であると語った。
そして2010年から、京都を皮切りにBEVバスの日本導入を開始。自動車分野に進出するにあたり、公共交通から始めた理由として「皆様の生活の役に立ちたいのです。日本は地方都市が必要とするモビリティが実に少ない。ですから日本に合ったサイズのバスを作りました」と熱弁した。
足場ができたところで、2022年に乗用車販売会社BYDオートジャパンを設立。現在、全国に59拠点を展開し、2025年末までに100拠点への拡大を目指すという。
そして今後の事業については、2025年中にPHEV、2026年にEVトラックの日本導入を予定している。
2030年までに累計4000台のEVバスを販売する計画
続いて、商用車部門を担当するBYDジャパンの石井澄人 執行役員副社長が登壇。EVバス事業の状況から話を始めた。
石井氏によると、BYDは2008年から商用車の研究を始め、現在の累計生産台数は12万7000台。イギリスのロンドンバスの多く(1700台)がBYD製に切り替わっているという。
日本では、これまで4車種を導入。350台を販売し、国内EVバスのシェアの約7割を占めていると紹介。またEVバスのニーズは年々高まっているとのこと。
主力商品のひとつJ6は、日本向けに専用設計したマイクロバス。日本の道路事情やニーズに合わせていることで好評を博しているという。ちなみに、1回の充電で210km走行可能とのこと。
路線バスに適しているという大型バスのK8。バッテリーを薄型にすることで低床化を達成しているとのこと。充電はCHAdeMO方式で90kWhまで対応するという。
今回発表した新型EVバスのJ7は、日本市場での使い勝手を最優先して専用開発。乗車定員54~58人、車幅が日本のバスに多い2.3mに抑えられた中型バスだ。インホイールモーターを採用した独自のeアクスルを搭載しているほか、大容量のバッテリーは、災害時にはスマホ1万7000台もの給電能力を有しているとのこと。販売価格は3650万円。
さらに石井氏は、EVバス販売台数を2030年までに累計4000台を掲げた。そして全国にサービス拠点を設けるなどサポート体制を強化し、バス稼働時間の最大化に貢献すると誓った。
最後に2026年からのEVトラック日本導入により、脱炭素化社会に貢献していきたいと力を込めた。
BYDの日本導入第4弾はクーペSUV「シーライオン7」
最後に乗用車部門にあたるBYDオートジャパンの東福寺厚樹 代表取締役社長がステージに上がり。2024年を総括。グローバルで425万台、そのうち日本で2223台を販売した。そして俳優・長澤まさみ氏のCM起用のほか、全国でタッチアップイベントの実施、BYD SEALの日本導入を行なったと報告した。
続いて日本市場について。過去6年間で輸入車の販売台数は下落傾向で昨年の販売実績は22万5518台。その一方で、EV比率は10%越えを達成。EV市場は伸びていると分析している。
日本導入第4弾となる「BYD SEALION 7(シーライオン7)」は、RWD車(一充電走行距離は590km)と4WD車(同540km)の2グレードを展開するクーペSUV。価格も含め、現時点で国内仕様の詳細は明らかにされなかったが、4月に発表・発売することを宣言した。
今後の計画について東福寺社長は2025年末までに販売拠点を100か所にする計画であると強調。認知拡大については、引き続きCMに力を入れるとともに、今年開催予定の東京モビリティショーへの出展を考えていると語った。
また、年に1台以上の新型車を日本市場に投入する方針を打ち出すとともに、2025年末にPHEV車の導入を目指すことを明かした。だが販売できるかどうかについては、明言を避けた。そして2027年末までにBEVとPHEVを合わせて7~8車種のラインアップを構築する計画であるという。
驚きのスピード感で日本市場を席捲するBYD
会見を通じて感じたのは、高いリサーチ力と早い行動力だ。それはバスや商用車の分野ですでにEV車のうち7割のシェアを獲得していることからもわかる。そしてそれほど多くない販売実績の日本市場に向けた専用車まで用意しているというから驚きだ。
この日本市場向けは、乗用車にも当てはまる。コンパクトカーのドルフィンは高さ制限のある立体駐車場に向けて全高を下げてきたし、昨年は初めて特別仕様車を用意した。
これらはリサーチや商品企画から製品化までの時間がとても短いばかりか、小ロットでも対応する小回りのよさからくるのだろう。会見でいくつも強気な数字が掲げられるのも、そうした体制があるからこそ。会見後、笑顔で見送るスタッフたちを見ながら、日本のEVの行く末をふと思った。
