開発陣もファンが多い作品、どちらの世界観も活かすバランスが難しい

版権元とも何度も相談、オーバーウォッチ2×ヒロアカコラボについて開発者にインタビュー

2024年10月19日 10時00分更新

文● 八尋 編集●ASCII

「オーバーウォッチ2」と「僕のヒーローアカデミア」がコラボ

 Activision Blizzardが展開する「オーバーウォッチ2」で、「僕のヒーローアカデミア」とのコラボが実装されている。スキンはトレーサーが緑谷出久、ラインハルトがオールマイト、ジュノがお茶子、リーパーが死柄木弔、キリコがトガヒミコとなっている。

 今回、このコラボについてアート・ディレクターのディオン・ロジャース氏にインタビューする機会を得られた。ロジャース氏は、オーバーウォッチ、オーバーウォッチ2のビジュアル開発と世界観の構築に貢献している人物だ。Blizzardのゲーム開発者としては15年以上携わっているという。

アート・ディレクターのディオン・ロジャース氏にインタビュー

世界観がマッチした「オーバーウォッチ」と「ヒロアカ」
開発陣にも多くのファンがいた

──オーバーウォッチ2では、「ワンパンマン」とコラボし話題になりました。今回は「僕のヒーローアカデミア」とのコラボとなり、ヒーロー繋がりがコラボの1つだと思いますが、改めて経緯につい教えてください。

ディオン・ロジャース氏(以下、ディオン氏):やはりワンパンマンもヒロアカもヒーローというテーマがあったので、オーバーウォッチとの世界観とよくマッチしています。“ヒーロになりたい人”と、“誰でもヒーローになれる”という共通項があるので。また、オーバーウォッチの美術やデザイン部門といった開発陣の中にもヒロアカのファンがたくさんいるので、このコラボが実現できてうれしいです。

──日本のアニメ作品とよくコラボされていますが、経緯や選ばれている理由があれば教えてください。

ディオン氏:色々なタイトルやアニメのリストが常に共有されています。開発の中にも子供の頃から慣れ親しんできた作品や、最近観て好きだった作品の中から、オーバーウォッチの世界観にマッチすると思う作品、とくにアニメが数多くあります。開発陣から「こんなコラボどうですか」とプレゼンしてくることも多く、その中にヒロアカも入っていました。アニメの世界観としてポジティブさが伝わってくるのが、開発陣としても鼓舞されますし、オーバーウォッチもポジティブさが特徴ですので、いい感じにコラボできると感じました。長年親しんできた作品なので、コラボできて光栄です。

──コラボキャラクターが発表されていますが、オーバーウォッチ側、ヒロアカ側でほかに候補に挙がったキャラクターがあれば教えてください。

ディオン氏:ヒロアカのキャラクターはカッコよくて楽しいデザインのヒーローが多いので、発表したメンバーに絞り込むのがすごく大変な作業でした。個人的には鳥の頭をした常闇踏陰が好きだったんですが、彼も集中するのがオーバーウォッチのヒーローと多くにマッチすると思っていましたが、ほかのメンバーはメインキャストから選びたい! とのことだったので、泣く泣くお蔵入りになりました。あと技術的に無理だったんですけど、オールマイトの弱った状態も入れたかったんですけど、中々難しくて強いオールマイトのみの採用となりました。

オールマイト×ラインハルト

──選ばれた5人のスキンについてコダワリのポイントを教えてください。

ディオン氏:まずは全体的に見るとゲームプレイを大事にしているので、オーバーウォッチの世界観にどうやってマッチするのか、プレイヤーとして使っても問題ないようにキャラのシルエットを重視しています。そういう意味で、緑谷出久(以下、デク)とトレーサーは性格的にも似ているし、生い立ちもどことなく似ています。トレーサーは自分の個性がずっと弱点だと思っていたところを、ウィンストンに出会って長所だと気付いたんですけど、デクも個性を見つける度に似ていると思うので、デクとトレーサーはいいマッチングだと思いました。

デク×トレーサー

 ラインハルトにオールマイトを選んだ理由も、シルエットがわかりやすいからです。性格的にも楽しいし、声が多きめだし、隙あらばほかの人を助けようという性格もマッチしているので、オールマイトを選びました。

 麗日お茶子とジュノですが、コラボが決定したときは、まだジュノは開発中でした。かなりヒーローを作るには時間がかかっていて、開発中であれど性格的にもシルエット的にもすごくマッチングしていたので、開発中ながらお茶子はジュノだ! ということで選択しました。残りの2人は、ヴィランとコラボさせないといけないよねということで、リーパーとキリコのコラボを決めました。キリコは性格的にいい子なので、逆にヴィラん役にしたら面白いと考えて、採用しました。

ジュノ×お茶子

リーパー×死柄木弔

キリコ×トガヒミコ

──発表された5人の中でお気に入りのコラボはありますか?

ディオン氏:個人的に自分はラインハルト推しなので、ラインハルトかなと。初期のヒロアカだとオールマイトが来てくれれば大丈夫という感じがすごく好きですし、オールマイトがデクに色々教え込んでいくという先生役としてもすごく好きなので、オールマイトとラインハルトのコラボを推します。ヒーローの先生というコンセプト、素晴らしいですよね。

コラボのキャラクターの雰囲気を出しつつ、オーバーウォッチらしさも保つのが難しい

──デザイン的にすごく気に入っているなというヒーローや、開発に苦労したスキンがあれば教えてください。

ディオン氏:すべてのヒーローにおいて、正しくコラボ先のエッセンスを取り入れつつ、オーバーウォッチらしさを保つのがすごく難しいです。コラボに関しては、オーバーウォッチのヒーローたちがコラボ作品のファンで、コスプレをしているという設定です。今回も、例えばトレーサーにおいてもヒロアカをよく知っていて、デク推しでデクのコスプレをするんだよ! みたいな設定になっています。それと同時にコラボ先の雰囲気や素晴らしさを凝縮して、オーバーウォッチ内で楽しんでもらいたいと思っているので、コラボ先の雰囲気を醸し出しつつ、オーバーウォッチらしさも保つというのが難しいです。一番難しいと思うのが髪型です。変えすぎるとシルエットが変わってしまい、キャラの雰囲気も変わってしまうので、あまり変え過ぎたくない。ヴィジュアルのエフェクトを変えることもあるのですが、そのさじ加減も気にしています。

──コラボスキンの対象枠が限られていますが、実装が出来なかったキャラクターがいれば教えてください。

ディオン氏:ビジュアル的にヒロアカらしさを出すというのは難しいなと感じるキャラクターは多かったですね。とくに「PLAY OF THE GAME」でもヒロアカらしさをどう出すかというのも考慮したかったので。できなくはないけど難しいということも多かったです。あと、オールマイト以外の教師陣も入れたいなと思っていましたが、シルエット的に合ったヒーローというのが難しくて断念しました。

──コラボスキン以外にボイスやエフェクトなど見た目以外も変化する仕様は用意されていますでしょうか?

ディオン氏:全員分は用意していませんが、何人かはサプライズで用意しています。ちょっとした何かだったりするので、その辺はプレイで確認していただければと思います。

──開発スタッフで人気の高いヒロアカのキャラは誰でしたか?

ディオン氏:開発陣にとってもデクやオールマイトといった、最初から人気が高いキャラクターは、人気が高いですね。開発の中にはすごいヒロアカオタクの人もいて、コアなキャラクターを候補に出す人もいましたね。ただ、やはりシルエットなどの問題で見送ったキャラクターが多いです。デクとオールマイトについてはほとんどの人が推していましたね。

版権元とも何度もやり取り
ラインハルトの表情やトレーサーの髪型をとくに相談

──版権元の集英社や、作者の堀越耕平先生とやりとりはされましたか?

ディオン氏:版権元ともやりとりはしました。一番話したのはラインハルトの顔についてですね。ラインハルトはおじいさんといえる年齢なので、オールマイトの顔が出ると違和感が出ないか、老けすぎてないか、若すぎてないかのコントラストがあったので、それが一番相談しましたね。あとは、トレーサーの髪型ですね。トレーサーらしさを残しつつ、デクってわかるかというのは大変でした。ただ、版権元としっかりやり取りできるのは楽しかったですし、よかったです。

──どのキャラクターのスキンが最初にできましたか?

ディオン氏:最初はやっぱり主人公のデクですね。どちらかというと、迷ったのはコラボスキンをどのヒーローに採用するかですね。あと、お茶子のスキンは新しいヒーローのジュノに採用しようというのも、結構早い段階から決まっていましたね。

──最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

ディオン氏:我々開発陣もコラボをすごく楽しみにしています。なぜならアニメや漫画のアートやデザインがすごい私たちのデザインに励みになったり、影響もされます。自分の大好きな作品とコラボしたキャラクターが、自分たちで作った世界で動き回るのを見るのが楽しみですし、光栄だと思うので、ユーザーの皆さんも一緒にコラボを楽しんでいただければと思います。ぜひヒロアカの世界観をオーバーウォッチで楽しんでください。

──ありがとうございました。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

ASCII.jpの最新情報を購読しよう