2024年4月26日にマイナーチェンジしたHondaのコンパクトSUV「VEZEL」。使い勝手も、ハンドリングも、乗り心地も向上した一方、ちょっと気になったところも。そこで一般道を走行した印象を「5つの〇と1つの×」という形でお伝えします。
2代目VEZELとの出会いは最悪でした
筆者が2代目VEZELと出会ったのは2021年春のこと。大雨の中、山中湖で行なわれたメディア向け試乗会でした。山中湖周辺は「道志みち」「マリモ通り」といった風光明媚な湖畔周回路があるほかに、富士スピードウェイへ続く「三国峠」「明神峠」という峠も。つまり「そこに行って踏んでこい」と考えるのが、クルマ好きの「同志みち」というもの。
そんなHondaの意図を汲み(たぶん)、四駆仕様で三国峠へ。ですが登りはじめるや、VEZELは軽自動車のようにエンジン音を唸らせるわりに前に進まない、路面のギャップのたびに強い衝撃をドライバーに伝えてくるなど「これはどうしたものか?」と困惑。どこか故障したのでは? と、試乗途中で一旦戻り、確認のため開発担当者を助手席に乗せて再度登坂。
開発者から「別に異常ではない」という言葉を聞いたあと、嫌われることを覚悟で「350万円もするSUVで、この音と足はありえない!」と言いまくったのでした……。
その後、何度もVEZELを試乗した結果、峠のような場所でなければ、普通によいクルマであると認識しました。
VEZELは2022年に5万736台、2023年は5万9187台を売り上げた人気車種でもあるので、今回は改めて別の切り口でレポートしたいと思います。
時を経て2024年。Hondaは上位モデルとしてZR-V、エントリーモデルとしてWR-Vをリリースして、SUVラインアップを拡充。いずれも魅力あふれるクルマで、売り上げも好調の様子。しかし、WR-VとVEZELがほぼ同サイズということから、そのポジションは微妙なものに……。
そこでHondaはVEZELの「個性と上質さ」に磨きをかけ、WR-Vとの差別化をするとともに、VEZELの魅力を際立たせました。
【新型VEZELの〇なところ その1】
ライバルより静かな車内
新型VEZELメディア試乗会の地に選ばれたのは御殿場。推奨コースには箱根スカイラインが設定されていました。それは市街から箱根スカイラインの入り口に至る「県道401号・長尾峠を走ってこい」ということ。
長尾峠は頭文字Dに登場する「レーシングチーム カタギリ」のホームコースとして知られている場所。路面にはブラックマークが刻まれており、薄暗く、荒れた路面は新型VEZELの実力を測るに十分すぎる場所なのです。
試乗はe:HEV(ハイブリッド)のFFモデルからスタート。上り坂ではアクセル開度の高い状況になるわけですが、そこで感じたのは「明らかにエンジンが静かになった」こと。
それはダッシュボードやルーフ、フロアなどの各遮音材と防音材の厚みや配置を最適化して、エンジン始動音やロードノイズが低減したほか、e:HEVのエネルギーマネジメント制御を見直して、エンジンの始動回数や停止頻度を大幅に低減したから。
エンジンがガンガン回った状態でも、高音域部分が抑えられて低音域のみが聴こえるので、実に心地良かったりします。
この静粛さは、1.5L 3気筒エンジンを搭載するトヨタのハイブリッドSUVを大幅に上回るもの。また、エンジンが回った時の日産e-POWERと同等かそれ以上の静かさで「静粛性の高いコンパクトSUVが欲しい」という方にVEZELは好適。
静粛性を上げた理由はエンジニアによると「市場要求というよりも、多くのジャーナリストさんから指摘を受けたので……」と秘めたる胸の内をポロリ。嫌われること覚悟で指摘してよかったと思いました。
【新型VEZELの〇なところ その2】
ステップアップシフト制御で気持ちよさアップ
一般的にCVTは「エンジン回転数の最も効率の良い回転数を維持したまま加速する」というメリットがあります。その一方で、運転していて違和感を覚えることも。新しいVEZELではステップアップシフト制御(エンジン回転数に合わせ、加速感が得られるもの)を見直して、よりドライバーにとって気持ちのよい変速をしてくれるようになりました。
これが峠のヒルクライムで威力を発揮! 低くなったエンジン音と相まって「SUVのSはスポーツのSだった」と改めて思わせてくれます。
【新型VEZELの〇なところ その3】
しなやかでスポーティーな足まわり
VEZELは世界各国で販売されるグローバル車。以前のFF車は日本と海外で異なる足回りだったのですが、それを四輪駆動モデルと同じく一本化したといいます。この足が実に見事で、最近のHonda車らしい「しなやか」さと「安心感」を両立させた乗り味! 硬質な乗り味は影を潜め、実に快適に峠道を走ります。
それは街中でも同様で、快適そのものといったところ。しかし、四輪駆動モデルの乗り味は変わらず。ですが、次に紹介するHuNTパッケージや、純正アクセサリーで用意するホイールに取り換えれば、この乗り味は変わってきます。

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